REBORN Short
□『逢いたい』
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―15年後
外は桜が咲き誇る季節。
『貴方』が好きだったこの景色の中を、僕は1人歩いている。
この景色を毎年見る度に思い出す、『貴方』の事。
実際、僕は『貴方』の事を思い出すのは、この季節だけと決めていた。
毎回思い出す度に心が締め付けられるから。
『貴方』の事を思い出す度、色々な事を思い出す。
僕が幼すぎたために『貴方』を傷付けた日々も『貴方』は、確かな愛という大きな腕で僕を包み込んでくれた事。
5年前に「俺のところに嫁が来るんだ」と言われてから、新しい日常が始まった事。
「もう貴方の事は忘れるよ。」
あの時、僕はそう言って自分の記憶から『貴方』を消した。
消したはずなのに、気付けばもういない『貴方』を探している。
今になって解った事だが、『貴方』は5年前のあの時もわざとああ言った。
普通なら「俺、結婚するんだ」で事足りる
。
ここからは僕の勝手な推測だが、『貴方』はもう、他の『誰か』と『結婚』していたんだと思う。
だから不器用にだが、その『誰か』にせめてもの愛を伝えた。
だから、その『誰か』にこれ以上何も言わずに微笑み、優しく包み込んだ。
逢いたい、逢いたい。
僕が『貴方』の事を忘れられる、否、忘れる訳が無いじゃないか。
『貴方』は今も僕の心にいるから。
溢れて、溢れて。
もう声にならない。
だから僕は『貴方』を空に想い描く。
泣いたり、笑ったり。
『貴方』と共に歩んだ足跡、永遠に消えはしないさ。
果てしなく、また巡り逢う命。
来世もまた、『貴方』に逢えるかな?
ありがとう、ありがとう。
生きる苦しみ、喜びを何度も教えてくれてありがとう。
とても僕からは伝えきれない、この想い。
想いよ、どうか『貴方』の元へ届いて欲しい。
逢いたい
もしも願いが叶うのなら、あなたはどんな願いを叶えますか?
僕は迷わず答えるだろう。
「貴方に逢いたい」と。
END