REBORN Short

□『逢いたい』
1ページ/2ページ



―15年後
 


 外は桜が咲き誇る季節。


『貴方』が好きだったこの景色の中を、僕は1人歩いている。
 

 
 この景色を毎年見る度に思い出す、『貴方』の事。


実際、僕は『貴方』の事を思い出すのは、この季節だけと決めていた。


毎回思い出す度に心が締め付けられるから。


 
 『貴方』の事を思い出す度、色々な事を思い出す。


僕が幼すぎたために『貴方』を傷付けた日々も『貴方』は、確かな愛という大きな腕で僕を包み込んでくれた事。


5年前に「俺のところに嫁が来るんだ」と言われてから、新しい日常が始まった事。


「もう貴方の事は忘れるよ。」

 

 あの時、僕はそう言って自分の記憶から『貴方』を消した。


消したはずなのに、気付けばもういない『貴方』を探している。


今になって解った事だが、『貴方』は5年前のあの時もわざとああ言った。


普通なら「俺、結婚するんだ」で事足りる



ここからは僕の勝手な推測だが、『貴方』はもう、他の『誰か』と『結婚』していたんだと思う。


だから不器用にだが、その『誰か』にせめてもの愛を伝えた。


だから、その『誰か』にこれ以上何も言わずに微笑み、優しく包み込んだ。



 逢いたい、逢いたい。



 僕が『貴方』の事を忘れられる、否、忘れる訳が無いじゃないか。


『貴方』は今も僕の心にいるから。



 溢れて、溢れて。



 もう声にならない。


だから僕は『貴方』を空に想い描く。



 泣いたり、笑ったり。



 『貴方』と共に歩んだ足跡、永遠に消えはしないさ。



 果てしなく、また巡り逢う命。



 来世もまた、『貴方』に逢えるかな?



 ありがとう、ありがとう。



 生きる苦しみ、喜びを何度も教えてくれてありがとう。


とても僕からは伝えきれない、この想い。



 想いよ、どうか『貴方』の元へ届いて欲しい。




逢いたい



 もしも願いが叶うのなら、あなたはどんな願いを叶えますか?




 僕は迷わず答えるだろう。




 「貴方に逢いたい」と。


END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ