REBORN Short
□幸せ者
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何時の間にか、俺の目はいつもあいつの背中を追っていた。
理由なんて分からない。
分からないが、それが好奇心ではないと気付いたのは、あいつが女に告白されている場に丁度出くわしてしまった時だった。
あの時、俺はそれを見て心がズキッと痛んだ。
あいつが女にモテるのは知っていた。
あいつに告白した、という話もよく聞く。
話を聞いた時はいつも、「また告白されたのか」としか思わなかったが、実際に目の前で見てしまうと、そうではいられなかった。
明らかに動揺している自分がいたと同時に、諦めを叩き付けられた。
女ならあいつに告白できる。
が、男だったらどうだろうか。
まず間違いなく無理だ。
少なくとも俺には無理だし、決してされて嬉しいものでもない。
その時、どれだけ女に生まれたかったと思った事か。
男に生まれた事を後悔した事か。
誰にも分からないだろう。
否、分からなくて当然なのだ。
なぜなら俺が普通ではないから。
………俺が異常だから…………。
そう自分に言い聞かせ、俺は諦めた『振り』をしていた。
………諦めきれなかったのだ。
僅かな可能性すら信じていたかったのだ。
そんな時、奇跡が起きた。
『3-△ 獄寺隼人、至急応接室へ』
最初は何かと思った。
また校則違反についての説教だと思い、溜め息を吐きながら応接室へ向かった。
毎度の如く、勢い良く応接室のドアを開けると、深紅の薔薇の花束を抱えたあいつがいた。
俺が唖然としていると、正面から声をかけられた。
「何ぼーっとしてるの?早く入りなよ。」
「あ、あぁ……。」
一体、誰にあげるのだろうか……。
「……これを貰える奴は、幸せ者だな…。」
「そうだね、君は幸せ者だ。」
「は?」
「これは君へのプレゼントだ。誕生日おめでとう、」
『隼人』
は……や、と……?
「大好きだよ。」
だい、す…き……?
何を言われているのか、理解出来なかった。
だが、俺の本能は理解出来たようで、涙が顔を伝った。
「隼人?」
「………Grazie,Kyoya……」
END