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□愛し方なんてわからなかったんだ
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もう、力が入らず痛みしか感じる事のない右手
光を失い暗く曇ってしまった瞳
その瞳から一筋流れる涙
その体の中は酷く傷つけられている
「貴…方は、酷い…ひ…と…」
掠れた声で呟くように放たれる
そのまま、眠りに落ちてゆく
「そんな事とっくの昔に知ってる…」




もう何度同じ事を続けて来ただろうか
目が覚めると酷く重たく激痛の走るからだ
重たく腫れた瞼
骨の折れた右手には包帯
全て何時もの事…
重たい体を引きづり浴室に向かって
昨日の事がなかった事になればいいのにと思いながら汚れた体を洗うのも、何時もの事
下に降りるとルートヴィッヒが朝食を作っていて私のけがを見てすまなさそうな顔をするのも何時もの事
そして、10時を過ぎた頃身形を整えた彼が降りてくるのも何時もの事
もう、何ヶ月も前に崩壊してしまった家の中
…彼は私が大嫌いなのであろう
暫く…この怪我が治るまでは彼は何もしてこない
それが救いであり、恐怖であった
大好きなピアノも最近はまともに弾けてない
左手でコードだけを叩いても何も面白くない
ピアノの前に立つだけで涙が込み上げる
ここにはギルベルトは滅多にこない
だから、いつもここで泣く
周りには聞こえないように声を必死に抑えてひっそりと…
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