短編
□それは気付かない程の傷痕をつける
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戦場を包むのは爆発音と黒い煙。そして辺りに広がるのは血の匂いと脈打つことを止めた人。
敵だけではなく、味方もそこら中にゴロゴロと横たわっている現状はまさに地獄絵図と言えるだろう。私は歩きながらに思った。
「…ど、こに、行くつもりだ?」
「医療班の所です。微かですが、生命反応があります。そこで貴方を治療してもらいます」
「止め、とけ。ウチは、もう手後れだ…」
「…もう少しですから辛抱してください、マスター」
背中に背負う人物に私はそう返した。
マスターは私を作り出した人。産みの親であり私の主。
私は彼により限り無く人に近い形状で作られたが、根本は何も変わらない。
主の命令に従い、主を守ることが私の使命であり、存在意義である。
なのに、
『ッ、危ない!!』
一瞬。
本当に一瞬の出来事だった。
私に当たるはずだった一発の砲弾が、私の前に現われたモスカに被弾したのだ。
それは、
『マスター!!』
マスターの乗ったものだった。