シリーズ

□この出会いに意味があるのなら
4ページ/4ページ


私に固執する意味が分からなかった。
















「スパナ!何だよこれ!」

「猫」

「見れば分かるよ!そういう意味じゃなくて何で猫がここにいるかって僕は聞いてるんだ!」

「拾った」

「だから何で!」


男に拾われてから一日が過ぎた。久し振りに食べ物にありついた私はその後死んだ様に眠りに着いてしまったらしい。(数時間おきに男が私を突っ突いてくるのがとても鬱陶しかった)
本来ならまだ寝ていたい所だが、鉄の塊からはキュンキュンと音がして煩いし、終いには私を拾った男とそれとはまた別の男が言い合いをしだすので、私は起きる羽目になった。朝(と言ってももう昼近いが)から騒がしい所だ。こっちは怪我をしてるのだから考えて欲しいものだ。
しかし、話を聞いているとどうやらこの騒動には私も絡んでいるらしく、無視する訳にもいかなかった。と言っても、私は勝手に連れて来られただけで、私を責めるのはお門違いである。非があるとするならば猫である私を連れてきたこの男にあるだろう。


「分かっているのかスパナ?僕たちはマフィアだ。もうすぐ本格的なボンゴレ狩りだって始まる。猫を飼ってる暇も時間もないんだぞ!」

「でも飼っちゃいけないっていう理由もない」

「そうだけど!大体キミは猫を飼った事あるのかい?!」

「ない。けど何とかする」

「何とかするったってさぁ!」


終わりの見えない討論。お互いの意見は交わる事もなく平行を維持したままだった。
それにしてもこのスパナとかいう男、変わった奴だとは思っていたがまさかマフィアだったとは…。血の匂いもしなかったので裏の人間だとは思わなかった。それにこんな貧弱そうな人間がマフィアなどという血生臭い世界にいるとは考えられなかった。
ならそんな人間が何故ここまで私に固執しているのだろうか?
もう一人の男が言うように、今この世界はマフィアの抗争で荒れている筈だ。猫に構っている暇などないだろうに。
そんな生活に癒しが欲しかった?生憎、私は人間などに媚び甘えるつもりは毛頭ない。他の猫を当ってくれ。
昨日から口にする"ジャッポーネ"に関してなら、それは昨日から言っている様に大きな勘違いである。



「スパナ、何でそんなにもこの猫にこだわるんだい?何か理由でもあるの?」


すると、もう一人の男が心底解らないとでも言う様に言葉を吐き出した。
ふむ、この男とは気が合いそうだ。私もどれだけ考えても奴の意図が全く解らない。まぁ、猫の私が人間の思考を理解しようとすること自体無謀なのだろうが、それでも私を拾った男は他の人間と比べて何処か違った。


「んー、理由は無い、と思う。ただ、」


その変わった男は唸り声をあげて一応考えた様だが、




「あそこで死ぬのはもったいないと思ったんだ」




私を拾った時と同じことを口にした。
この男を理解するには100年かかっても無理だろうと私は悟った。

















【見据える先に】

(あ"ー!もう分かったよ!その代わりちゃんと世話するんだよ!)
(正一)
(何?)
(この猫、三毛猫なのに猫まんま食べなかった)
(何てことしてんだ!!)



理由も未来も不明確だった



前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ