短編
□ジャイアニズムの法則
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「あ、あのベル…」
「何?」
「離してもらいたいのですが…」
ヴァリアーの諜報員である私は任務の報告をしにボスの下へと向かっていた。
しかし、その途中ベルと鉢合わせし、何故か拉致られ、そして今はベルの膝の上に座らされ後ろから抱き締められている状態だ。
異性に、しかもヴァリアーの幹部であるベルに抱き締められるなんてロマンチックな展開かもしれないけど、私からしてみたらこれから死刑台に上る囚人の気持ちと同じだ。
ドキドキと高鳴る胸は決して恋愛感情から来る物では無く、ぶすりとナイフで刺されたらどうしようと言う不安と、報告が遅れたことによってボスの逆鱗に触れてしまうのではと言う恐怖から来る物、(い、嫌だ。まだ死にたくない!!)
の筈だった。
「本当に離してください」
「ししし、王子に命令するわけ?お前」
「滅相もありません!!ただのお願いです!!そ、それに私、ザンザス様に任務の報告をしに行かないといけないんです」
「ふーん。でも、駄目」
私の心情を総無視すると、ベルは突然ひょいっと私を持ち上げ、対面させる様向きを変えた。
いきなりの出来事に驚いている私を、ベルはこれまた綺麗に無視をし、そしていつも自分の頭にあるティアラを外して私の頭にぽすりと乗せてきた。
「だって、お前は王子の物だからお前の物は王子である俺の物。つまり、お前の時間も俺の物で、お前は俺と一緒にいなきゃいけない訳。分かった?」
満足そうに、にんまりと笑うベルを見た私は、このドキドキが恋からくるものでは?と少しだけ勘違いをした。
【ジャイアニズムの法則】
(カスが!!俺を待たせるとは良い度胸だな)
(ざ、ザンザス様これには深い訳がありまして)
(言い訳は無用だ)
(ひぃいい!!)
勘違いを起こすぐらい強引