短編

□きみありき
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久し振りに来た雪見さんには右手が無かった。
本人は取材の最中に車で事故って腕を切断したと言っているけど、きっと違う。
だけど、私が聞いても答えてくれないだろうから私は納得したフリをして家に迎え入れた。


「本当に無事で良かったです。はい、レモネード。熱いんで気をつけてくださいね」

「おお、すまねぇな。ん?そいつは誰の分だ?」

「え?」


雪見さんに指摘されて、初めて私は持ってきたマグカップが一つ多いことに気付いた。
そのマグカップには小さな黒猫が描かれていて、しかも私が飲めないレモネードまで入っている。
でも、これを持ってくるのは当然のことで、むしろこれを持っていかなきゃいけないんだと何故か分からないがそう強く感じていた。



「え、あ、だって…、」











『――君は何か飲みたいものある?』







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