小説
□Ti Amo
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全てが紅く染まる。
「浅井軍を滅せよ」
全てを紅に染める。
兄様の天下のために、
市は世界を紅く染める。
「何故だ市!?何故、お前が!!」
長政様の悲痛な叫び声が辺り一面に木霊する。
深く、
深く、
この罪を刻み付けていく様に、
市の身体へと木霊していく。
「ごめ、ん、なさい。市は、市は…」
言葉を紡ごうにも、それはもう言い訳にしかならない。
分かっていた。市は長政様を好きになってはいけなかった。市には帰る場所があったのだから。
それでも、
「ごめん、な、さいっ」
市は長政様を好きになってしまった。
「…そうか」
だらりと剣を降ろした長政は悲しそうに、寂しそうに市を見て笑う。そんな長政様を見て、ズキズキと痛みが市を蝕んでいく。
もっと早く会えたら、
長政様と会えてたら、
未来は変わってた?
市は…
「私は、弱いな」
違う、違うよ長政様。
長政様は弱くなんかない。
弱いのは、
「な、が、まさ、さまぁ…」
あなたと一緒に歩く勇気の無い市の方だ。
涙で歪む視界の中で市は長政様を見つめ続けた。
【キスをするたびに目を閉じてるのは未来(あした)を見たくないから】
(こんな未来、見たくなかった!!)
罪を背負いながら生きてく覚悟はできてる。
だけどあなたを失う覚悟なんてできない。
song by EXILE゙Ti Amo゙