短編

□きみありき
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「…何で泣くんだ」


気がつくと私は涙を流していた。流れる涙は溢れるばかりで止まってくれず、何でこんなにも出てくるのだろうと自分でも不思議に思った。


「わか、んな…。でも、でも、止まらないんですっ!」



ポロポロと流れる涙が止まらない。
ズキズキと心の痛みが治まらない。


制御しきれない想いが、感情が、渦になって私を掻き乱していき、そして掻き乱された先にあった答えが悲しいのだと私に告げるから、さらに私の涙は溢れて出ていった。




悲しい。
でも、何で?
寂しい。
だけど、分からない。




「ご、ごめんなさい」

「いい。今はスッキリするまで泣いとけ」



そう言って撫でてくれた雪見さんの手があまりにも優しかったので、今はこの悲しい気持ちを洗い流そうと私は小さな子どもの様に泣き続けた。


















キミがいない















【きみありき】

キミが誰だか分からない
だけど
キミはいたんだと
残した傷跡が私に告げる



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