短編

□答えにならない答え
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「ウチ、何でアンタと付き合い始めたんだっけ?」


我が者顔で楽しみに取っておいた和菓子を頬張る彼女を見て、ウチは思わず口に出してしまった。
だって、彼女はウチみたいに頭を使うような技術者じゃなくて、何も考えず自ら最前線に突っ込んで行く戦闘員だし、むしろ凄く不器用で、機械を触らせたら5分後には黒い煙を立ち上ぼらせるほど神懸かった機械音痴だし、遠慮とか配慮なんて言葉知らないのか物凄く図々しいし、自分勝手だし、がさつだし、口悪いし、食い意地はってるし…、アレ?アンタのいい所はどこ行った?先ずそんなのあったっけ?じゃあ、ウチはアンタの何に惹かれたんだ?その前にアンタと何時何処でどうやって会ったんだっけ?

考えれば考えるほど謎は増えていってウチの頭の中は分からない事でいっぱいになった。(第一、何でウチのお菓子勝手に食べてるの?)


「スパナ君、チミは馬鹿ですね。むしろカバか?いや、スパナはハゲだ。禿げカバだ」


すると、彼女はやれやれと人を小馬鹿にした様な顔をしてそう言ってきた。
考えるよりも先に体が動く構造をしてるアンタだけには絶対言われたくない。っていうか禿げカバって何?そもそもウチ禿げてないし。(ウチの和菓子返せ。3倍ぐらいにして返せ)
流石にウチも頭にきてムッとしていたら、彼女は更に飽きれたような顔をして溜め息を吐き始めた。


「そんなの好きだからに決ってんじゃん」



そして、さもそれが当たり前であるかの様に答えた。

好きだからって…。いや、その好きになるまでにも色々な工程があったから相手を好きになるんであって、ウチが聞いてるのはその好きになるまでの工程なんであって…、


「…やめた」


やめよう。
なんか考えるだけ無駄な気がしてきた。
元から機械のこと以外よく分かんないし。第一、彼女以外、他人に興味を持つことなんてなかったから分からなくて当たり前な気がする。あ、じゃあ彼女のいい所一つ見つけた。ウチの興味を引く人間ってこと。うん、これは間違ない。
それにウチは嫌いな人と付き合う様な趣味もそんな暇もない。
例え機械音痴で、がさつで、人のお菓子を勝手に食べる非常識な人間でもウチは彼女が好き。うん、これも間違ない。

ウチは彼女が好きだ。
この気持ちに嘘はないし、きっと死ぬまで変わらないと思う。


「解決した?」

「んー、ねぇ」

「何?」

「キスしよう?」

「はぁ?!」

「キス」

「なななな何言ってんの?!っていうか何でそうなった?!」


四苦八苦しながらも機械を弄るアンタも好き。
素直になれず、口が悪くなるアンタも好き。
ウチの和菓子を幸せそうに食べるアンタも好き。
今だって顔を真っ赤にさせて慌ててるアンタが愛しいって思ってる。

ウチ、かなり重症なのかも。
まぁ、別に構わないけどね。





「Perch? io come te!」






アンタが好きで仕方ないんだから。


















【答えにならない答え】

(そんな理由があるかぁああ!!)
(アンタが先に言ったんだろ?)
(いやそうだけど)
(隙あり)
(?!)
(ご馳走さま)



答えになってない?
だって仕方ないんだ。
キミが好きってことしか頭に無いんだから。



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