短編

□大空へ、海へ、キミへと
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拝啓

寒さがいっそう身にこたえる季節になりました。キミは元気に過ごしているでしょうか?
突然このような手紙を送ることをお許し下さい。初めましてと言うべきなのでしょうか?和梨と申します。…やっぱり「お久し振りです」に変えますね。お久し振りです。和梨です。
キミは私を覚えていますか?
キミが私を覚えているのでしたらごめんなさい、私はキミのことを覚えていません。
ごめんなさい。失礼な奴ですね。本当にごめんなさい。
なら、何故私がキミに手紙を送るのかキミは不思議に思いますよね。実は私もよく分からないんです。自分でもおかしな話だなぁと思います。
だけど私はキミを知らないけど、私にとってキミは特別な存在だった気がするんです。
キミは確かに私の中にいたんです。
でも、キミは今私の側にはいない。そして私の中でもキミの存在は曖昧になっています。それに気付いたら何だかいてもたってもいられなくなっちゃって…。
連絡しようにもキミの電話番号もメルアドも分からなかったのでこのような手紙を送らせていただきました。
と言っても、キミの住んでいる場所も名前さえも分からないのでとても原始的な方法ですが小瓶に入れて海に流してみました。だから私はこれをキミが読んでいるという前提で書いています。
キミはこんな私を笑いますか?
できたら笑わないで欲しいです。馬鹿なことをしてるとは十分分かっていますし、それに案外私は傷付きやすいんです。どうしても笑ってしまうと言うのなら小さな声でこっそりとお願いします。


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