小説

□ひとりにしないから
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「嫌だ。獄寺一人で偵察なんて、俺も獄寺と一緒に行く」


グスグスと鼻をならし、山本の目からは大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちている。
これは、何も今始まった事ではなく山本と獄寺が同じ任務につけない時によく見られる光景だった。だから、いつもは山本にバレないよう細心の注意を払っているのだが、今回は巧くいかなかったらしい。
嫌だ、嫌だ、と駄々をこねる山本はまるで留守番を嫌がる子どもの様だとツナは痛む頭を押さえながら思った。


「ほ、ほら山本。偵察って言ってもそんな危険なものじゃないしさ。俺だって心配だけど、獄寺君しか頼める人いないんだよ、ね?」

「第一、テメェも十代目から仰せ付かった任務があんだろが」

「嫌だ、一緒に行く」


どんなに説明しても、山本は頑として一緒に行くと言い張って獄寺を離そうとしない。
そればかりか、行かせるものかとでも言うように獄寺へと抱き付く始末だ。
獄寺の偵察を漏らしてしまった大馬鹿者をどうしてくれようかと頭の片隅で考えながら、ツナはこの状況を切り抜ける打開策を探していた。


すると、この騒ぎの元凶である山本は嗚咽を押させながらもたどたどしく訳を話し始めた。


「だ、だって、よ。獄寺が、け、怪我とかした、らどうすんだよ。もし、もし、獄寺に、何かあったら?そう考えたら、俺、俺、」


う"ーと最後に唸り声をあげた山本は獄寺の肩に顔を埋め、またボロボロと泣き出してしまった。
そんな山本に最初獄寺は、抱き付くな、泣くな、と怒鳴っていたが、ここまで来ると飽きれて物も言えないらしい。
あからさまな溜め息をつき、自分の肩に顔を埋めている山本をちらりと見た。



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