小説

□大馬鹿者の恋愛事情
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「獄寺、今日ちょっと付合ってくれよ」


そう言われて山本に連れて来られたのは竹寿司、つまりコイツん家だった。しかも、寿司を握るためにカウンター前へと立っているのは山本の親父じゃなくて、


「何で、テメェが立ってんだよ」


山本自身だった。ご丁寧に山本の親父がいつもしている様な格好をしてやがる。
何だコイツ?何がしたいんだ?


「ハハッ!!今日は、俺が握ろうと思ってさ。何食いたい獄寺?」


悩んでいると、山本はまるで俺の思っていた事を読んだかの様に笑って答えた。
まぁ、コイツも一応寿司屋の息子だから寿司を握る事はおかしくないし、当たり前の事なんだろう。ただ、何で今日に限ってコイツが自分で握るなんて言い出したのか俺には理由が分からなかった。コイツん家で食う時は、俺と一緒に寿司を食う側に(自分家の寿司だってのによ)回ってたくせに。何でだ?




「薄気味悪いなぁ、何でお前が握んだよ?」


考えてもコイツの意図が分からなかった俺は(そもそも、コイツの場合、意図があってやってんのかさえ怪しいが)聞いた方が早いという結論にたどり着き、カウンターを挟んで立つ山本へと疑問をぶつけてみた。
すると、山本は少し困った様に笑いながら俺の質問に答えた。


「いや、ほら今日獄寺の誕生日じゃん?何かプレゼントしようと思ったんだけど、何も思いつかなくて…。でも、何かしなきゃって思ってさ、獄寺寿司好きだろ?だから、今日は俺の作った寿司を腹いっぱい食ってもらおうと思って…」


こんなプレゼントでごめんな、と最後は怒ってもいねぇのに、怒られたみたいに山本は謝りだした。
馬鹿だ、馬鹿だ、と今までコイツの事を思っていたが、どうやら俺は間違えてたらしい。


コイツは真の大馬鹿野郎だ!!


他人のために、もっと言うと俺自身でさえ言われるまで忘れてた誕生日とやらのために、そこまで真剣になるか普通?!
おまけに浮かばなかったから自分の作ったもんを食べてもらおうなんて、お前は小学生かと怒鳴ってやりたい!!

いや、コイツは馬鹿なだけなんだ。大馬鹿者できっと頭がおかしいに違いない。



だけど、



「マグロ」

「え?」

「腹いっぱい食わしてくれんだろ?言っとくが、食えねぇもん出したら承知しねぇからな」








それを嬉しいと思う俺は、もっと大馬鹿野郎で頭がイカれてる。







【大馬鹿者の恋愛事情】

(獄寺)
(あ?)
(誕生日おめでとな)
(…ふん)


キミが僕を馬鹿にする
だって、キミが愛しいから


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