BSB

□病院ではお静かに
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今日は二か月に一度の通院日。目が痛くなるほど白く、そしてやたら広い大学病院の中を俺は迷うことなく足を進めていった。
病気が発覚してからずっと通い続けている上に、入院や検査やらであちこち歩き回ったおかげで、案内図を見なくても大抵の場所にはいける様になってしまった。最初みたいに迷わなくなったのはいいけど、裏を返せばそれほど利用しているとなるのでなんか素直に喜べない。

あともう一つあまり喜べないことは、
「…ごめんなさい。ちょっと右腕だと針が血管に刺さらないから、左腕でもう一回採血させてもらってもいいかしら?」

「あ、良いですよ」

「ごめんなさいねー」

「いえ、慣れてますから。俺の方こそ血管細くてすみません」



採血のやり直しにより、注射に慣れてしまったということ。
どうやら俺の血管はとてつもなく細いようで、注射針を血管に刺すのがとても難しいらしい。しかも最悪なことに両腕とも細い様だ。
俺の腕を目の前にすると看護士さんはうんうんと唸りながら血管を捜して恐る恐る注射針を刺すけど、大体の人が血が採れずにやり直している。これが病院に行く度に起こるんだから、嫌でも注射の痛みに慣れるよ。
いや、そりゃ針刺されんのは痛いよ。ただなんていうか、一瞬のことだし、そんな嫌がるほどでもなくなった。っていうか逆にここまで針が刺さらないと物凄く看護士さんたちに申し訳ない気持ちで一杯になる。
この前なんて血管がなかなか見つからなくて看護士さんの方が泣きそうだったし。
もう俺は心の方が痛いよ…。本当すみませんごめんなさい看護士さん…。



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