BSB

□キミがキミであること
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「クロさん、ちょっと聞いてよ」

「ニャンですか?絵仁君」

「最近俺ね良君に避けられてんの。俺、何かしたのかな?」

「元気を出してくださいニャン!このクロが絵仁君を癒して差し上げますニャン!」

「ありがとうクロさん!もう超可愛いよクロさん!」

「……一人演技は楽しい?」

「そんな可哀相な目で見ないで史佳ちゃん…」


飼い猫を抱えて一人小芝居をしているカイ君は正直可哀相な人にしか見えなかった。
カイ君が「クロさん」と呼んで抱えているのは本名を黒兵衛というメスの黒猫である。名付けたのはもちろんカイ君で、私は女の子なのにそんな名前じゃ可哀相だと抗議したけど「女の子だから強く生きなくちゃ!そして強く生きてく為にはまず名前からだよ!」と訳の分からない持論を展開され、半ば強引に決められてしまった。母さんやお兄ちゃんも面白いからって黒兵衛に賛成したのもあるけど…。私の家族はネジが一、二本どころか、十本、百本単位で外れてると思う。今はクロと愛称で呼んでるけど、やっぱり可哀相だと今でもそう思うし。
とまぁ、そんなクロさんをカイ君は胸に抱いて一人落ち込んでいた。原因は最近良郎君に避けられているかららし


「気のせいじゃないの?」

「だって、俺の顔みたらどっか行っちゃうし、良君に話し掛けても返事してくんないし、それに良君、いつの間にか俺に敬語使ってるしさ」

「う〜ん」

「俺、良君に嫌われちゃったのかな?」


しゅんとまるで叱られた子犬の様に落ち込むカイ君を見て良郎君に避けられてるのが相当ショックなんだなって思った。
良郎君は私以上に人見知りが激しいって聞いてるけど、小さい頃から一緒にいる私達には当てはまらないし、避けられてる理由があるとしたらカイ君が何かしでかしたかだけど、温厚な良君の逆鱗に触れる様なことはたぶんしてないだろう。と言うより、カイ君は限度ってものを知ってるから早々他人を怒らせるって事はしない。困らせることは沢山してるけど…。


「寂しいよ、俺」


するとカイ君は腕の中にいるクロさんに縋りつく様にして擦り寄っていった。そんなカイ君の異変に気付いたのかクロさんも心配そうにカイ君を見上げている。


「言えば良いんじゃないかな?寂しいって」

「だって、寂しいなんて言ったら良君困らせちゃうじゃんか」

「でも、言わなきゃ分かんないよ」


仕様のない兄だ。
変な所で遠慮するんだから。
優しすぎるといいかなんと言うか。まぁ、そこがカイ君のいい所でもあるんだけど。だからと言って我慢すればいいってものでもない。


「それに元気のないカイ君なんてカイ君じゃないよ」


それにカイ君に元気がないとこっちも調子が狂ってしまう。
カイ君はニコニコ笑って、幸せそうにご飯を食べて、楽しそうに遊んでた方がいい。そっちの方がカイ君らしい。
良郎君が何でカイ君を避けてるかは分からないけど、変にカイ君が距離を取ったらどんどん溝だけが深まってく気もするし。


「…クロさんもそう思う?」

「にゃー」

「そっか」


飼い猫に尋ねて何かを得たのか、カイ君はうんうんと頷き始めた。っていうか、カイ君なら本当に動物の言葉が分かりそうだよね。
なんて、私が思ってるとは知らないカイ君は先程とは打って変わり、ニコニコといつもの様に笑っていた。



「ありがとう史佳!なんか元気でた!クロさんもありがとう!」




そんなカイ君を見てやっぱりこっちの方がいいなと私は改めて思った。













【キミがキミであること】

(にゃー)
(うんうん、ありがとうクロさん)
(本当に何言ってるか分かってそうで恐い…)


笑ってるキミがキミらしい



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飼い猫と戯れる絵仁が書きたかっただけです。←
終わりが意味不明。orz



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