BSB

□小さな猫の物語
1ページ/1ページ

むかしむかしあるところに黒猫がいました。その猫はまだ産まれて間もない小さな小さな黒い子猫でした。
しかし、黒猫はいつも一人でした。まだよく見えない目で辺りを見回してみても、黒猫のお父さんはいません。小さな鼻をヒクヒクと動かしても、黒猫のお母さんの匂いはしません。小さな黒猫は広い世界の中で独りぼっちでした。
けれど黒猫はお母さんとお父さんを探しました。にゃー、にゃー、と毎日声が枯れてしまうほど鳴き続けて名前も知らない両親を呼んでいました。


にゃー、にゃー、にゃー。
お父さん、お父さん、私はここだよ。私はここにいるよ。

にゃー、にゃー、にゃー。
お母さん、お母さん、何処にいるの。何処へ行ってしまったの。

にゃー、にゃー、にゃー。

にゃー、にゃー、にゃー。

ねぇ、誰か。
ねぇ、誰か答えてよ。
淋しいよ。独りはやだよ。


黒猫は声を張り上げて毎日泣いていました。



「そんなに鳴いてどうしたの?親とはぐれちゃった?」



そんなある日、一人の男の子が現れました。
男の子は辺りをキョロキョロと見回しながらしゃがみ込むと、黒猫の小さな体をなで始めました。


「もしかして捨て猫なのかな?こんなに小さいのに…」


男の子は黒猫を労る様に、そして黒猫を怖がらせない様にして黒猫を撫で続けました。
もし、もしも、自分に親というものがいたらきっとこの男の子の様な存在なんだろう。
そんな風に黒猫が思うほどその少年は優しく、暖かかったのです。


「うちにおいで。大丈夫、なんとかするよ。だからもう淋しくないよ」


そう言うと男の子は自分の着ていた服で黒猫を包み、ゆっくりと歩きだしました。その服は偶然にも黒猫と同じ色をしていました。


(そっか。このひとが私のお母さんでお父さんだったんだ)


同じ黒に包まれて黒猫は嬉しそうにぐるぐると泣きました。
その日から黒猫は独りではなくなりました。



--------------
私にしては珍しく途中書きで作品あげました。
もう少しだけ続きます。

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ