夢の中で


□3話 悲劇
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 ナルトを寝かせてから30分経った時、サスケの心の悲鳴が聞こえた。
(兄さん…どうして!?)
「…サスケ?」
 舌打ちをして、うちは屋敷へ向かった。


「イタチ!」
 弟に背を向け、立ち去ろうとするイタチに向かって叫んだ。
「…桜花さん」
 あの時の光景と動悸を必死で抑えて、彼の頬を叩いて叱ろうと思ってやめた。彼が泣いていて、小声が聞こえたからだ。
(俺に術をかけて下さい)
(無効の術を、お前にか?)
(はい。8年後に発動するようにお願いします。サスケの心の傷を軽減するためにも、ナルト君と一緒にサスケを育てて下さい)
 無効の術をかけ終えて、彼は姿を消した。
「兄さん…ひぐっ」
「…サスケ」
 地面に座り込んだまま泣く黒髪の少年に、手を伸ばした。
「オレに触るな!!」
 その手を払われ、彼の瞳は紅く輝いていた。
「兄さんは、イタチは、一族を抹殺したんだぞ!? 部外者のお前に、なにが分かる!!」
 しゃっくりを上げながら涙を流すサスケに、昔の自分を重ねた。
「ああ。お前から見たら、オレは部外者さ」
 そう言って、サスケと同じように地面に座った。
「…オレも、お前と同じ境遇に遭ったんだ」
 夜空を見上げて、ぽつぽつと語り始めた。
「12年前。桜木一族は、ある組織によって滅びた」
「…組織?」
 頭の片隅で、あの時の光景が鮮明に蘇る。


(母上。なんで私を隠すの?)
(過激派のリーダーと、あの男に渡さないためよ)
(リーダー? あの男?)
(面をした男で、黒地に赤い雲のマントを着たヤツらなの。桜花、その男に捕まるんじゃないわよ)
(うん。…カオリは、どこ?)
(この城を守ってるから大丈夫よ。カオリの家族も戦ってるから。さ、早く逃げなさい!)
 その後、何者かによって母上は斬殺された。その人は、群青色の簪をしていたことだけは憶えている。


「……」
「…オレは、ソイツらに復讐するために忍になった。…サスケ」
「なんだ?」
 ナルトにいつもしているハグを、同じようにした。
「闇に染まらないでくれ」
 それが、自分と同じ道を歩まないように願う精一杯の嘆願だった。
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