夢の中で
□5話 悩み
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眠れなくて忍服のまま夜道を歩いていると、教え子たちが『化け狐だーっ!!』と悲鳴を上げてすぐ横を走り去っていった。
「なんだと!?」
彼らが出てきた場所は、だいたい見当がついた。墓地だ。どうせ、肝だめしをやっていたのだろう。そこに向かって、走った。
墓地の一番奥に塔がある。そのてっぺんに、小柄な『何か』が立っている。それは飛び降りてきて、オレの前で着地した。
クナイを構え、相手を睨む。
狐の仮面をかぶって、フロシキをマントのように羽織った金髪の少年。それだけで誰かを理解し、構えたクナイをポーチにしまった。
「へへーん、ざまーみねえ! みんな驚いて逃げてった! 早く逃げないと、先生も食い殺すってばよ!?」
「………」
「…あ? どうしたんだ、先生?」
きょとん、という効果音がつきそうなほど、オレを見つめるナルト。
「ナルト…お前、自分が何をしているか分かっているのか?」
それは、心から問い尋ねたものだったが、ナルトはそれをはねつけた。
「なんだよ…なんでなんだよぉ!? そうやって、みんなオレのことを、担任の先公までがそんな目で見るんだ!! 姉ちゃんは、オレをそんな目で見ねえ!!」
その言葉で、我に返る。そして、疑問に思った。
(『姉ちゃん』? ナルトに姉がいたのか?)
「オレは! 迷惑でもバイ菌でもねーってばよ! オレは! オレは、うずまきナルトだ!!」
「ナルト…」
「オレ…もう二度とアカデミーには戻らねー!!」
「おいっ!」
そう言って走り去った小さな背中を、見送ることしか今のオレには何もできなかった。
「くそっ!」
小さく悪態をついた。
そして、翌日。彼は朝から姿を見せず、結局1日アカデミーを欠席した。
重い気分のまま職員室に教材を置き、しばらく外を散策した。
深いため息をついて、近くにあるベンチに座りこんだ。
「…はぁ」
ナルトに対する自分の行動を思い出した。忍術の授業の時、うまく分身ができなかった金髪の少年に対して言った言葉だ。
(いいんだ…この子は)
「くそっ!!」
その時、女性の声が聞こえた。