りくえすと
□デレデレ
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「広美〜v」
双子の片割れで1歳になったばかりの広美を抱き寄せ、『ぎゅ〜っ』と抱く。
「パッパー」
小さな手で、服の裾なんかを『きゅっ』って握り返してくるもんだから、もう理性がヤバス。
「ったく、朝から晩まで『広美、広美』って…。この親バカめ」
昼食を盆に乗せて持ってきた妻・景は、不機嫌顔で言う。
「だってカワイイんだもんv」
「…ま、そりゃそーだけどよ」
そのまま箸をとって食おうとした手をぴしゃりと、思いっきりひっぱたかれた。
「食う前に言うことは?」
「イタダキマス」
「よろしい」
景はヒザに双子の弟を、オレは双子の姉を抱え昼食を食べた。
「カカシ。お前、午後から任務は?」
「なーいヨ」
「そうか。…オレは女王の仕事で、桜の国に戻るから」
「ん。行ってらっしゃ〜い」
広美の小さな腕を持って、ばいばいした。その時、妻の顔が一瞬だけ曇った。
「? どしたの?」
「なんでもない!!」
語気を強められ、この場から姿を消し去りたいと言わんばかりの速さで行ってしまった。なんとなく、その後ろ姿が寂しそうに見えた。
気のせいか。
妻の『朝から晩まで〜』というのは、ホントだ。自覚がある。ま! 双子の弟のほうも、ちゃ〜んと世話してるんだけど〜ネ。
「でも…」
景ゆずりの艶のある黒髪と、オレゆずりのブルーブラックの瞳で見つめられると…ねぇ?
「やっぱ広美が一番!!」
こうなるわけだ。
もう『親バカ』だの『アホ』だの好きに呼べ。
≪愛娘にはデレデレ≫