りくえすと

□プレゼントは
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 中学になって、一年目の秋にさしかかろうとしている時に限って、姉さんたちは多忙になる。まあ、いつもみたいに任務が入ってるんだろうとそんなに気にしないでおいた。
「――って、思ってるわよ。広美ちゃん」
「よし。じゃあ、薫。会議を始めるで!」
「はい、姉さん方に質問! 広美が好きな食い物は?」
「チョコケーキと…なんだったっけ」
 う〜…と頭を抱えて悩む翠さんと違って、瑠璃さんがさらっと答えた。
「チーズケーキよ」
「じゃあ、好きな歌は?」
「知らないわ」
「小さい頃は、童謡が好きだったわね」
「じゃあ、明日はあたし任務入ってないし、ショッピングしながらそれとなく聞いてみるわ」
「頼りになる妹を持って、姉さん誇りに思うわ」
「任せなさ〜い」
 ということで、翌日。超小型盗聴器つきネックレスを翠さんに渡して、バベルで待機した。
「ちょっと! もっと感度あげなさいよ!」
「これも重大任務のひとつなんだヨ!?」
 蕾ばーちゃんと、桐壷局長の板挟みになって、操作する人たちはてんやわんやだ。
『……は……今、どんな曲が好きなの?』
「お、いい感じ」
『そうだなー。東方神起の「bolero」とか、KALAFINAの「to the beginning」かな? カラオケ行こうよ。翠姉さん』
『姉さんは、もっとショッピングがしたいな』
『え〜、ケチ』
 ぶすくれる広美はさておき、好きな曲がわかってからというもの、あたし達はすごい勢いでパーティーの準備を始めた。なにしろ、3日後に彼女の生まれた日が控えているからだ。


「僕が手伝おうか?」
「皆本はあっち行ってて!」
「せや! 女子会に男はいらへん!」
「『いらへん』って、バベルとパンドラで祝うんじゃないのか?」
 料理を作るのは初めてで、スポンジの時点で紫穂や葵に習いながら何度も失敗し、顔や腕中チョコクリームまみれになっていく。
「でも、曲の練習くらいはしてほしいわ。はい。男たちは東方神起のヤツの歌詞ね」
「ねえ、紫穂。チーズってこれくらいでいいの?」
 ぺろっとひとすくいなめてから、
「うーん。もうちょっとグラニュー糖がほしいわね。5gくらい」
「わかった」
「ちょっ、澪! それ、50g!」
「え?」
 パンドラメンバーは、チーズケーキを担当している。ケーキに関しては、どっちも奮闘している様子だ。
 男子勢は、音程があってなかったり、テンポがズレてたりして、ぎゃいぎゃい騒いでいた。
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