未来のために・続

□39話 クアドラプル・ブースト
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 夜が明け朝が来て、ベッドの上で伸びをする私の隣には冬眠している姉の姿があった。
「おはよう。ふーちゃん」
 答えは返ってこないが、それでも礼儀として言う。さて、今日はホスピスに帰らなければならない。末摘さんが心配してるだろうな…と思いながらロビーに行くと、彼女が泣いていた。
「鍵…ですか?」
「透視したら、この建物が見えたわ。末摘さん。心当たりはない?」
「そう言われても…。見たことないですね。あら、佐倉ちゃん。おかえり」
「…ただいま。私、その鍵穴の場所知ってるよ」
 管理官のオフィスに案内するよう頼まれ、しぶしぶそうした。
「私もここに何回か来たけど、この本棚に一冊だけ鑑文字になってるのがあった。で、こう引っぱってみたら…」
 勢いよく本棚が開いた。パスワードを入れるための画面とキー。そして、鍵穴が存在していた。鍵を受け取り左に回す。画面が灯り『ENTER PASSWORD』の下に、難しそうな数式が表示されていたが、文字のみを読めばそれがわかった。
「PassWord MY AGE. 年齢か…」
「86歳の3乗。636056…と」
 主任が入力したが、『WRONG PASSWORD』と表示された。86歳じゃなかったら何歳なの。まともに考える主任と私とは違い、チルドレンは『17歳だ』と言った。それは見事に正解し、机が上に押しのけられた。
「意図的な悪ふざけも入ってるけど、それにしても、管理官は何を隠してるんだ?」
「はしごも階段もないね」
「通路っていうより落とし穴?」
「入ってみればわかるよ! 待ってて!」
「あ、おい、待て!」
「きゃあああーっ!?」
「か、薫! 無事か!?」
「だ…大丈夫! 途中から強力なECMが効いてたみたいで、超能力が消えて落っこちた。でも、ちゃんとクッションが用意してあったよ。あそこから下は超能力が使えないってことみたいね。てことはこうすれば出入りできるってことだね。で、問題はその次なんだけど。どう思う、皆本。さっきよりでかくて深い穴が…」
「とにかく行ってみるしかないよ」
 床にウサギの絵が描かれているのに気づかずに、私はその穴の中へと身を投じた。あとから薫ちゃん達が落ちてきた。
「ま…まだ超能力は使えないのか!? 佐倉!!」
「まだ…。…あ。使えるようになった」
「ECMの効果が消えた!!」
 薫ちゃんと二人でゆっくりと降りていくが、真っ暗で地面が見えない。葵ちゃんによれば、『数メートル下に地面がある』という。着地したと同時に古めかしい照明が灯って、半円形のトンネルの先にミサイルが見えるように開かれた場所があった。どうやら、一昔前の軍事施設らしい。紫穂ちゃんがミサイルを透視すると同時に、皆本主任は辺りを見回す。すると、金属のバルブで固く締められている場所があった。
 中へ入ってみると教室一部屋分の広さで、映写機がひとつと椅子がいくつか置かれていた。これも紫穂ちゃんが透視して、動かしても問題はないということで再生してみた。そこには、礼服を見に包んだふーちゃんがいた。
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