未来のために・続

□43話 もう少し先の未来へ
1ページ/2ページ

 本土から離れた孤島で、なぜか私は皆本主任と共に捕まっていた。状況を見た限り、チルドレンの差し金だと判断する。ヒュプノをかけられた、。
『京介。外してあげて』
「千鳥はもちろんだが、なんでそいつまで外さなきゃならない」
『これ、ESP対抗装着付きだもん。京介なら楽勝でしょ?』
「ったく。世話が焼けるヤツだ。まあ、いいだろ。僕も多少はお前の世話になったからな。ほら、貸せ。その…僕の不在中、例のガキが色々とナニしたみたいだが、その件は僕は関係ない。とはいえ、まあ一応義理は通すのが筋だと思わなくも…ないこともない」
〈頑固ダナ。京介〉
「そうだね。モモちゃん」
 素直にお礼を言えばいいものの、プライドが邪魔して言えない。そして、皆本主任の失言によって一気に機嫌を損ねる婚約者の姿に、モモちゃんと私は呆れていた。
「京介? お前、覚えて…」
「『兵部少佐殿』と呼べ! ハナクソ野郎!!」
「しまっ…ぐわああああ! お前な!!」
「ふん。別れを言うなら早く済ませろ。たぶん、外した時に警報が発信されてる。すぐにチルドレンが来るぜ。それも、かなりテンション高い状態で」
「別れ? しかし、どこへ帰るっていうんだ。薫!」
『帰る場所ならあるわ。京介が行っていた場所。虚無の世界』
「どういうことだ!? 説明してくれ!!」
『正直あたしにもよくは分からないけど。説明して?』
「丸投げかよ。僕らより時空を理解してる伊号によると、予知というのは、僕達にとってまだ実際に起こっていない出来事だ。観測と干渉の結果、消えてしまえば別の未来が生まれる。君達は、日常的にそうやって災害を防ごうとしているよな。となると、フェザーがやって来た未来の世界というのも、元々存在などしてない。彼女本人を含む全ての知生体にとって、それはただの幻だ」
「過去への移動そのものが幻だと?」
「実際にどうかは分からん。物理法則を超えるのが超能力だからな。ただ、物理法則世界の住人たる僕達には、それ以外のなんでもないってことだ。僕達にとっての事実は、『彼女は無から生まれた』。あの未来を観測した結果としてな」
「未来の記憶を持った存在として、それを変えるために生まれた。いや。超能力で創られたと!?」
『薫ちゃんにとって、エスパーは守るべき家族だわ。敵であっても、まして接触してきたファントム・ドーターには、心の傷があった』
「ブーストの力は、それを受けた者の中に留まり、やがて、共鳴、反響して広がっていく。発した言葉や気持ちのようにね。そして、ある瞬間、その力はフェザーという存在に収束した。予知によって悲劇に収束しようとしてる世界を救うために。あくまでも、伊号の僕ら向けの説明だがね」
「見た目の現象としては、そうかもしれないが、やはり、現在のチルドレンや仲間達の力だけでは起こりえないだろう。因果律を超えるデタラメな力が宇宙の外から干渉したのは確かだと思う。とはいえ、宇宙の外のことを考えるのは無意味ということか」
『あたし、その考え方は好きよ。だって、失敗した過去を変えたわけじゃないんだもの。超能力はね、未来を変える力よ。私も、私のいた世界も幻でいいの。未来は、これから大人になる子供達のものだわ』
 そのおり、チルドレンがここへ到着した。真剣な表情で、フェザーを見据える。そして、薫ちゃんが手にしているものは、フェザーの元々の形態であるティア状のマテリアルだ。それをそっとフェザーに手渡す。
「私達、難しいことは分かんないけど…」
「考えたんや。フェザーは、このまま消えてしまうんちゃうかって」
「でもダメだよ。あんたは、あたし達が創る未来へ連れて行く! そこでは、みんな楽しく暮らしてるはずだよ。絶対もう戦争なんか起きてない。あたし達の創る未来だもん! それまで、フェザーはあたし達が預かる! そして、あんたが時間を超えたその日が来たら、あたし達とひとつになればいいんだよ! 京介がそうしたみたいに!」
「ムダな過去なんかない! それは全部いつか幸せになるための通り道だって」
「ウチらは信じてる。だから…」
「あなたが生きてきた世界。もう消えてしまった過去の未来。それがどこにつながるのか見届けて!」
『あなた達で考えてくれたの?』
「うん」
「じゃあ、僕をここに拉致監禁したのも、彼女を未来へ送り届けたいという想いからだったのか」
「え」
「いや。それはさっき…」
「あ」
「そうそれ」
「うん」
「明らかにただの思いつき!!」
 皆本主任がキレた瞬間、フェザーが薫ちゃんを抱きしめる。そして、彼女の形状が崩れていく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ