夢の中で (短編)

□昨日会った人は…
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「イルカせーんせ」
「…え?」
 書類を書いていた手を止めて顔を上げると見覚えのある女性が目の前に居るが、忍服を着ているせいで違う印象を受けた。
「『え?』って何?もう忘れちまったの?」
 首を横に振ると、にっこりと微笑まれた。
「そう。よかった」
 彼女を見つめたまま『ぼーっ』としていると、横から火影様の声がした。
「さっさと渡さんか」
「あ…はい。今日の任務です」
 Aランクの任務が書かれている書類の束を渡すと、小声で
(行ってきます)
と言われたから、反射的にオレも
(行ってらっしゃい)
と言った。
 彼女が受付室を出るまで、任務を受け取りに、または報告書を提出しに来た暗部を含めた忍び達が呆けていた。
「…綺麗だな」
「そ〜だネ」
 怒気を含んでいる声に、さっきの柔らかな雰囲気とはうって変わって、室内に絶対零度並みの寒波が訪れたんじゃないかというほど冷たい空気が流れ込んだ。
「カ、カカシさん」
「んー?」
 木の葉一のエリートである彼が、オレの目の前に立っていていつもの笑顔を…いや、黒い笑みを浮かべていた。
「どーした〜の?」
「い、いえ…」
 この空気に我関せずな態度でいられるのは、オレの横に座っておられる三代目くらいだ。と心の中で思いつつ、
「桜花は渡さないから」
 異様に目をギラつかせ、ドス黒い感情を放つカカシさんのオーラにオレはただ、首を縦に振るしかなかったのだが…周りの反応は違った。
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