夢の中で (短編)

□あきらめて
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 オレは待機所のソファーに身をうずめて愛読書のイチャパラを読んでいるが、桜花は疲れ切ってテーブルに突っぷしている。
「なんで、オレがお前のサポーターなんだ…」
「三代目から与えられた任務にケチつける〜の?」
「ちげーよ」
 テーブルから頭を起こして、ぐしゃぐしゃになった長髪を後ろへかき上げる仕草が美しいと思ったのは、オレだけではない証拠に、アスマやガイ、紅でさえ頬を染めている。
「オレを副隊長にしたのは、お前の仕業だろ。4年前の『今度は、オレが上司になって桜花をかわいがってやろーかな?』って言ったことを実現させたんだな!?」
「え?そんなこと言ったっけ?」
 本当は覚えているけど、わざと知らないフリをした。
「言ったってば!」
 頬を膨らませる桜花がかわいくて、ついニヤけてしまう。
「オレ、桜花の怒ってる顔より笑ってる顔が好きだ〜ヨ?」
 すると、彼女は座っているイスから立ち上がり、オレに近づいて来て頬をつねった。
「いでっ!」
「寝言は寝てから言え。バカカシ」
 冷酷な瞳から発せられる殺気は、一般人なら即死レベルだ。
「分かったか?」
 とりあえず、首を縦に動かして頬に伝わる痛みから解放された。あー、痛かった。
「…あきらめてヨ」
「なにを?」
 (腰に手を当てて、ぐっと前のめりになる姿勢もイイよネ。おかげで、エキスモーキスができるくらいオレ達の距離が近いヨ。あと、シャンプーの香りが心地いいのもオレにとっては嬉しいことなんだヨ?)
 彼女の耳元で想いを囁いた直後、快音が待機所に響き渡った。


《あきらめてオレのものになって》
 

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