夢の中で (短編)

□新たなターゲット
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 桜花から過去の断片を聞いた後、オレ達はしばらく黙っていたが、カカシは外に出て、サクラとオレは各部屋へ戻った。
 だが、台所にいた桜花に呼び止められてしまった。
「なんだ?」
「ん…ちょっとサスケに話があってね」
 あのガキの母親が居ないことからして、この場所から出ていってもらったんだろう。
 冷蔵庫の前に立っている桜花の隣に行くと、いつもの笑みはなく真剣な表情でオレを見て、オレと同じ目線になるためにしゃがんだ。
「サスケ。これから言うことをよく覚えておけ」
 うなづくと、彼女の桜色の唇が言葉を紡ぐために開いた。
「来年の中忍試験に、オレにこの印をつけた男が会場に侵入してくる。ソイツはこの班に目をつけて、狙ってくる。ナルトも狙われることになるけど、一番のターゲットになるのは……サスケ。お前だよ」
「!!」
「このことが分かったのは、1ヵ月前。音隠れの里とその首謀者が、サスケの境遇を知り、復讐者という立場を利用してな。彼は、お前にオレとは違う呪印を施し、自分のものにする」
 努めて冷静になろうとしたが、目の前に居る桜花の瞳から目をそらせなかった。
 だから、かすかな恐怖が彼女に伝わってしまった。オレを育ててくれた憧れの人に、ウソをつけない。
「…怖い?…わかるよ、その気持ち。…でも、ごめんな。その時は、傍に居てやれない」
 命を狙われることが、こんなにも怖いことだなんて知らなかった。いつも狙う側で居た自分が、その逆の立場になる。
 その考えから、全身に鳥肌が立った。恐怖を和ませるように、桜花が6年前と同じように抱き締めた。
「…できる限りのことはするから…気休めにしかならないと思うけど。…お前のために特製の丸薬を作っておく」
 彼女の優しさに泣きそうになっている自分がいた。


《新たなターゲットは…オレ》
 

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