夢の中で (短編)
□ごめんね
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「おはよー。ナルトー。お・き・ろ」
ぷにぷにとクシナ似の頬を軽くつつくと、しかめっ面された。寝起きの顔は見慣れているが、毎回その顔に萌えてしまう自分がいる。
(あーもー。頬ずり攻撃しちまうぞっ!)
「…ん?」
ほんの少しだけナルトのチャクラを吸いとったような気がしたが、次の瞬間には、それが気のせいでないことが体によって示された。
「ごふっ」
布団に自分の口からこぼれた赤黒い液体が染みを作って、ふさぎ損ねた手に滑り落ちた。
「ね、姉ちゃん?!」
「大丈夫。いつものことだから」
「いつものことって…オレってば、桜花姉ちゃんが吐血するの初めて見たってばよ!!」
そして、触れようとした小さな手を振り払ってしまった。
「!!」
ナルトが生まれてきてから、初めて彼を拒絶した。その傷ついた顔が、自分を責める。
「…ごめん。今は触らないで。…ナルトが死んじまうから」
「…わかったってばよ」
のろのろとベッドから出る小さな背中を見て、小さく舌打ちをした。
朝食を食べ終えてから6年ぶりに暗部の服に着替え、玄関を開けようとするナルトに声をかけた。
「ナルト」
「なんだってばよ?」
「額当て、忘れてるぞ」
「あ」
居間のテーブルの上にある額当てにナルトが手を伸ばすよりも早く取り、ミナト譲りの金髪に触れるか触れないかの距離で額当てを結びながら話しかけた。
「サスケと仲良くするんだぞ」
「…うん」
「カカシに、迷惑かけるんじゃないぞ」
「…わかったってばよ」
直接肌に触れることはできないけど、物を介してなら触れられる。
「必ず帰ってくるから」
仮面で涙を隠して、うちは屋敷へ向かった。