夢の中で (短編)

□森
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 大蛇丸の研究施設から脱出して1ヵ月経った後、体力も回復してきた。
 散歩をかねて木の葉の森に行った時、小さな狼達が一カ所に集まって体を丸くして、怯えていた。
「どうしたの?そんな所に集まって…って、動物がしゃべるわけないか」
『失礼な!しゃべれるぞ!』
「…へ?」
 なにかの見間違い…いや、聞き間違いだと最初は思った。
「動物がしゃべった!」
『バカ斬牙(ざんが)!しゃべるなっつっただろ!』
『うるさい!いい子ぶりやがって。アホ狼牙(ろうが)!』
 それから12匹の小さな狼達は、ケンカを始めた。
「やめろよ!ケンカなんて」
 子犬達が、オレを見る。
『フ、フツーは、動物がしゃべった時点で、気味悪がるとこだろ!なんでビビんねーんだよ!?』
 斬牙と呼ばれた耳の毛が黒い仔狼は、泣きそうな表情をしていた。
「…わかんね。…なぁ、質問していいか?」
『ボク達が答えられる範囲なら、別にいいけど?』
 目元から鼻先にかけて灰色がかった毛を持つ狼牙は、おすわりの姿勢のまま言った。
「なんでしゃべれるだ?」
 すると、一番最初にしゃべり始めた斬牙が黙り込んだ。
「…なにかあったのか?」
 10秒が過ぎた頃、狼牙がぽつりと小さな声でツラそうな口調で告げてくれた。
『…大蛇丸という人間に捕まえられ、実験を受けた結果です。人間の言葉を理解できて、話せるように…脳をいじくられました。 ボク達は、それぞれの力をあわせて脱出して今に至ります』
 意外な、と言ったら失礼かも知れない。でも、自分と同じ共通点を持っていることに驚くより他に、そう表現するしかなかった。
「…そっか」
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