未来のために

□3話 ESP検査
1ページ/2ページ

 おとなしく椅子に座って看護婦から装置をつけられる様子を見て、目の前にいる皆本に小声で話した。
(で? あの子が昨日の映像の子か?)
(そうとはまだ決まってないが、とにかく検査してくれ。僕は、ザ・ハウンドと一緒にモモンガを探さなきゃいけない)
(…分かった。あとのことは任せとけ)
(あ。あと――)
(なんだよ)
 部屋の入口付近で話をしているために、出る人や入ってくる人の邪魔になっていることに気がついて、外に出た。
「…あの子は、旧日本軍の実験施設にいたんだ。白衣は脱いで対応してくれ。トラウマになってるだろうから」
「…あー…。分かった」
「それじゃ」
 廊下を足早に去って行く腐れ縁の同僚の後ろ姿を見送った後、言われた通りに白衣は着ずに部屋の中に入った直後、装置をつけ終えた看護師が報告してきた。
「あの子を患者服に着替えさせた時、肩甲骨に黒い翼の模様がありました」
「そうか。ありがとう」
 看護師に事務的な笑顔を向けてから、机の前に行った。
「…さて…」
 長机を挟んだ向かい側の椅子に座ると、少女と目があった。
「これからキミを担当する賢木だ。…『賢木先生』って呼んでくれ。キミの名前は?」
「………」
 無機質な瞳が、オレを見る。
 ノートパソコンの画面に表示されているESPの波形グラフを横目で見ると、真っ直ぐな棒のままだ。なんの変化もない。『ノーマルか』と考えてから、再び少女を見ると、なぜか怒っていた。
「えーと…?」
「こんな装置につないで、私をどうしようっていうの?」
 初めて聞くソプラノの声は、怒りで満ちていた。彼女の声音に反応するように、周りの装置が一斉に音を立てて壊れた。もちろん、傍にあるパソコンも例外ではない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ