未来のために

□4話 モモンガと兵部京介
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「…実験動物!? ひどい…!! 戦争のために無理やりエスパーにされたの…!?」
「…戦時中のことだからね。世界中の国で、同じことが行われてたんだ」
「で、どうするの!? 桃太郎、この先どうなるの!?」
 疑問符を連発する薫に、淡々と答えた。
「彼は空気をミサイルのように打ち出す能力があるようだ。かわいそうだけど危険すぎて、このまま飼うわけにはいかない。バベルで保護して、厳重な管理下に置く他ないだろうね」
「そんな…人間の都合で!!」
「皆本!! なんとかしてくれるよね!?」
 薫の必死の懇願に、胸が締めつけられる。
「ムリ言わないで、薫ちゃん。この場合は、そうするしかないわ」
「でも……!!」
「これも仕事なんだ。とりあえず薬で眠らせて、本部に――」
 そして、注射を打とうとした瞬間、千鳥の声が聞こえた。
「やめて!」
『誰?』
 僕が驚いたのと薫達が声を揃えて疑問符を口に出したのは同時で、その隙にモモンガを千鳥に奪い取られてしまった。
「モモちゃん! 何もされてない!? 大丈夫!?」
『大丈夫ダ。千鳥』
 ぎゅっとモモンガを抱き締める少女から、また睨まれた。
「モモちゃんに手を出そうとしたでしょ!」
「違う! 僕は、ただモモンガを眠らせようと…」
「うるさい! …やっぱり大人は信用できない!」
 少女に触れようとした時、モモンガが少女の腕から逃れて攻撃をしかけてきた。
「!!」
「皆本さん!!」
 モモンガの攻撃を真正面からくらって、明君が倒れた。
「明ッ!! 明ーッ!!」
「肋骨をやられてる!! すぐに救急車を―」
 そうしている間に、モモンガは外に逃げ出し、初音君は鳥になって追っていく。初音君を追おうとした薫を止める。
「追跡には僕が行く。キミ達は残って、明君のそばについてろ!」
「それなら朧さんが――」
「言う通りにしろ! この先は、キミ達には見せたくないんだ!」
『!!』
「人間にケガをさせた以上、もう僕らには、あのモモンガの処置について選択の余地がないんだ。あきらめてくれ」
「…ふざけるな!」
 それまで黙っていた患者服を着たままの少女が、叫んだ。
「殺す他に選択の余地はないって言いたいの!? 人間の勝手で無理やりエスパーにされた、こっちの身になって考えてよ!?」
 言うが早いか、薫達より頭ひとつ分低い少女は僕と朧さんを壁にテレポートさせて逃げられないようにした。
 薫達は少女の能力に驚きつつも、外に逃げたモモンガを追った。
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