未来のために (短編)

□数秒前
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 チルドレンの検査中に、ダブル・フェイスからの通信が入った。
『佐倉千鳥が本部に接近中。白衣を着用している人は、今すぐ脱いで下さい』
「まだ検査中やのに…」
「センセイ、急いで!」
「わかってる!」
「葵! 検査台に寝ろ!!」
 コンソールを素早く叩き、おおまかのデータを最速で収集する。
『千鳥、ロビーに到着。2階へ上がります』
「はやくして!」
「急かすな、紫穂! 今どこだ!?」
「…あと20歩で、ここに来るわ!」
『賢木クン!? 早くしないと…!!』
 局長までオレを急かす。あともう少し…。
「終わった!!」
 エンターキーを乱暴に叩くと同時にチルドレンは別の部屋に引っこみ、オレは白衣に手をかけ植木鉢の後ろに丸めて隠した。
 長く思える2秒後に、『ぷしー』と音を立てて検査室の自動ドアが開いた。
「ただいまー! 賢木先生!」
「お、おう、おかえり。千鳥」
 ぎくしゃくとした動きで、千鳥をやや引きつった笑顔で迎えた。
「…どうしたの?」
「ん? なんでもないぞ」
「…あっそ。まだ仕事終わらないの?」
「ああ。(あとで細かい情報を集めなきゃならんし…)」
「がんばってね。あ、ふーちゃんの部屋って、どこにあるの?」
「ここの地下だ。でも、今は管理室に居るんじゃねーの?」
 彼女の手をひいて部屋の前まで案内し終わり自動ドアの向こうに姿が消えた直後、一気に脱力感が襲ってきて壁に背をあずけてから、安堵のため息をついた。


《『急がねーと!!』って思ったが…間一髪で間に合ったぜ》
 

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