未来のために (短編)

□ずっと…
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 ホームルームが終わるなり、教室から廊下に引きずり出されて千鳥に怒られた。表向きは承諾したが、本当は納得していない。
 僕は、僕のやり方でここにいる。
 そんなことを言ったら、また千鳥の雷が落ちそうだったからやめた。
「………」
 後ろでは、かりかりと黒板に物理教師が書いていることをノートに写している音がする。
 (ヒマだ)
 その単語だけが、脳内をうずまく。
 頬杖をついて窓の外に広がる景色を眺め、意味もなく片手でシャーペンをくるくると回す。
 早くこの退屈な授業が終わってくれないか。
 後ろの席でマジメに授業を受けている千鳥と話がしたい。
 あと10分で終わる。
 早く終われ。
 チンタラ説明してんじゃねーよ、このノーマルが。
 イライラが募る。
 それを敏感に感じとった千鳥が、思考を送ってきた。
(京ちゃん、イライラしてるでしょ?)
 いたずらな笑い声も一緒に、送られてきた。
 前後の席で、それも至近距離でテレパシーを使うなんて思ってもみなかった。
(パンドラの長の僕に、物理学を説明されてもね。あ〜あ、ヒマだ)
(ってゆーか、エスパーの存在自体、物理法則超えてるっしょ? こんな授業、サボりたいなー)
 あと1分でチャイムが鳴る。
 この誰にも悟られない思考のやりとりが、あと1分で終わってしまう。
 そのことに、ヒドく寂しさを感じる自分がいた。
(ね、京ちゃん。お昼ごはん、どこで食べる?)
 答えるよりも早く、4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。


≪ずっと…この時間が続いてほしい≫
 

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