夢の中で


□3話 悲劇
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 サスケは黙ってうなずき、『わかった』と言った。その言葉に、とりあえず満足して彼らの片づけをして屋敷を去った。
 空が白ける中、ふと思った。

 ――そういえば、あの時は誰も慰めてくれるものなどいなかった。
 ――大蛇丸のアジトの一つの薄暗い部屋に閉じ込められ、絶望と喪失感を抱えたまま朝を迎えた。

「ミコトさん、フガクさん…オレは、あの子を立派に育てます」
 8年前のあの結界の中で、ミナトとクシナに言った同じ言葉を、かすかに光る星くずに向かって告げた。
 答えが返ってこないのは、百も承知だ。
 過去は変えられないが、この桜眼さえあれば起こったことを『無かったこと』にできる。
 それが、イタチが遺したサスケへの希望。
「よかったな、サスケ」
 紙に大きくうずまきのマークが書かれてあるドアのドアノブに鍵を差し込む前に、ぽつりとつぶやいた。
 オレは、いや、あの頃の『私』は、ただ絶望に暮れるまま、あの組織に復讐するためだけに全てを費やしていた。
 そして、この桜眼が開眼した時には『あの過去を変えよう』なんていう考えも浮かばなかったし、『生きよう』とも思わなかった。
 ただ、ひたすら任務に携わっていた。それが生きがいだと思っていた。
 そう。あの事件が起き、ナルトを彼らから引き取るまでは。今度は、サスケも育てなければならない。
「はっ…バカみてえ。あの時と比べて、ずいぶんと性格が丸くなったもんだな」
 自嘲的な笑みを浮かべて、鍵を回しドアを開け、朝食の準備にとりかかっていた。


 いつか、オレも母親になる日が来るのだろうか? 
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