夢の中で


□5話 悩み
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「お前の口からそんな言葉が出るなんて、初めて知ったぜ」
「…え?」
 夕暮れの光を受けて、見知らぬ美人の女性が立っていた。
 腰まで届く黒髪で、切れ長の黒い瞳。スタイルも良く、美人だ。だが、彼女が着ている服は紺の襟つきノースリーブで、黒のGパンという格好だ。
「…あなたは?」
「ナルトをアカデミーに入学させた張本人で、育て親だ。昨夜、ナルトから聞いた。担任だって?」
「…はい」
「隣、いいか?」
「あ、どうぞ」
 彼女が、空いている隣に座る。
「…悩んでるのか?」
 思っていることを指摘されて答えようか迷ったが、結局素直に言った。
「…はい。もちろん、彼と九尾は『別の物』と認識はしているんですが、彼を前にするとどうしても…」
「…ふーん」
 生返事を返した女性は、まじまじとオレを見た。自分の顔が火照っていくのが分かる。
「な…なんですか?」
「いや別に。で? 続けなよ」
「あ、はい」
 ぽりぽりと頬をかいて、言葉を続ける。
「その奥に潜む九尾が、私の頭の中に無理やり入りこんでくるんです。そんな私に心を開いてくれるとは…」
「なんで…そんなにナルトを恐れるんだ?」
「…え?」
 語気を静かに荒げ、睨んできた。そして、オレに背を向け『後ろのファスナーを開けろ』と言われ、顔を真っ赤にした。
「大丈夫だ。全部じゃない」
「は、はい」
 震える指で、おそるおそるファスナーをおろした。肩甲骨が見えた所で、ストップがかけられた。
「見えるか? 模様が」
「く、黒い翼が、みみみ、見えます」
「これはな」
 ヒドく暗い声で、語り出した。
「封印式だ。ま、九尾ではないが」
「まさか…『人柱力』とか言う…」
 肩甲骨の下に見えた刀傷は、浅いものや深いものがあった。
「…そうだ」
 立ち上がってファスナーを上げ、ベンチの横に置かれた紙袋を持った。
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