りくえすと

□どっちが悪い?
2ページ/2ページ

 ぶすっとした表情を隠せないまま、着替えてヘリに乗る。
「すまない。姉妹3人水いらずの時に――」
「もういいです。任務ですから」
 そのままそっぽを向いて、窓の外に開ける景色に目を走らせた。


 犯人は、レベル2のヒュプノの男。
「レベル2ごときで、私に勝てるかーっ!」
 腹立ちまぎれに、この男を海の中におぼれさせたり、高速のジェットコースターにベルトなしで乗らせるなどのヒュプノをかけた。
「ぎいやあああーっ!! や、やめてくれええ!」
 何もない歩道の真ん中でのたうちまわってる様子を見て、通行人はクスクス笑いながら通り過ぎたり、わざわざ振り返って笑ったりしている。
 で、結局犯人は捕まったが、ヘリに戻ったその様子をマネして、薫ちゃん達もゲラゲラ笑っている。
「こらーっ! 広美、ESP錠かけた相手にヒュプノをかけるか、普通!」
「だって、ムカついたんだもん。その腹いせに――」


 ぱぁんっ!


 快音が、ヘリの中に響き渡った。
「僕は、犯人を捕らえるのが最優先だと言ったはずだ! 君は――」
「うるさい!」
 そう怒鳴ったのは私ではなく、薫ちゃんだった。
「もともとは皆本がコールして、広美の大切な時間を奪ったからじゃん!」
「せやせや!」
 それから、勝ち誇ったように『ふふん』と鼻を鳴らせば、複雑な表情を浮かべて床に正座して、土下座した。
「すまなかった」
「誠意が足らへん!」
「もういいよ」
 いつものように笑顔を浮かべて、この件は一件落着した。


≪どっちが悪い? 皆本さんが悪い!≫


(広美クンは国の宝なんだヨ!? 少しは――)
(またか…)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ