未来のために・続

□37話 予知
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「…たしかに、場所はここで間違いなさそうね」
 タブレット端末を片手に、バベルの屋上へ管理官と京介と共に向かう。
「発生予定時刻は、明日の午後」
「もしその予知が事実なら、皆本クンは、教科明日か明後日に、ここから胸部をブラスターで狙うことになるわけね」
「しかし、他に同じ予知をしたプレコグはいない。ただ幻を植え付けられただけじゃないのか? 何が狙いなんだ?」
「ぼ、僕知りません。本当です!」
「しかし、昨日三橋さんになにかしたんだろ」
「それは…。でも、よく覚えてないんです。確かにあの時、なにか『自分にできることがある』って思ったんだけど。それがなんだったのか…」
「つまり、兵部に操られたんだな」
「それもわかりません」
 否定も肯定もしねえ『京介』の答えに、内心舌打ちをした。
「あなたも、なにをされたのかわからないのね?」
「は、はい。なにか念波を送られたのは確かです。でも、黒い感じではなかったので、元気づけようとしてくれたのかなって。私のテレパシーは弱いけど、そのくらいのことはわかります」
「いや。相手があの男なら、感覚を欺くのは容易なはずだ」
「それはどうかしら? あなたは、怖がっているのね」
「どういう意味だ? 僕は兵部という男をよく知ってる。警戒するのは当然のことだ」
「違うわ。あなたが怖いのは、兵部京介が悪人じゃない可能性。…はっ! ご、ごめんなさい。私、今なにを…!」
 わたわたと慌てる彼女に、助言する。
「レベルが急激に上昇してる時の症状だな。感覚に圧倒されて自制がきかないんだ。この状態も兵部が引き起こしたわけだが、善意でやったとは思えねえな。もっと詳しく調べてみよう。徹底的に」
「あの、僕も一緒に調べてみてください。もし、僕が操られているなら――」
「それはどうかしらね。超能力を使った側を調べてもあまり意味はないと思うわ。兵部が簡単にシッポを出すとも思えないし。それに、あれがもし予知だとしても、防ぐべき未来なのかどうかもわからない。事件性があるとは限らないわ。他のプレコグが予知しないのは、それが理由かもしれないのよ」
「たしかに…。じゃあ、管理官は何が起こるのか黙って待つべきだと…」


 薫ちゃん達を兵部が元いた地下監獄に数時間留まってもらい、俺たちは徹底的に調べることに専念した。
「ヒュプノでなにかしたのなら、機械的に検査してもこれ以上のことはわからない。サイコメトリーで潜ってみるしかねえ」
 皆本の毎度のセリフに同じ言葉を返し、内心ため息をつく。いい加減心配性な性格直せよな。
「じゃあ始めるぞ。三橋さんは、もう一度予知を」
「了解!」
「解禁!! サイコダイブ!!」
 精神世界に潜りこむと、その奥深くにヤツがいた。
(どういうつもりで何をしたのか、吐いてもらうぜ!)
 だが、兵部は片手で俺の首を絞め、こう言った。
(ひっこんでろ。ヤブ医者)
 現実世界でも兵部が姿を現したが、臨戦態勢に入る前に気を失わされた。ちくしょう、最近の俺って、こんな役ばっかじゃね? 次に目を覚ますと、ちょうど皆本と三橋さんが戻ってくるところだった。そして、彼女のレベルが上がっていることを確認し、礼を述べて立ち去ろうとしたが突然そこに突っ立ってしまう。彼女の肩に触れ、映像を透視してから機械で読みこむ。ひとつ目は、ブラック・ファントムと交戦し傷つく薫ちゃんと、ピンチに陥っている腐れ縁の皆本。一度そこで途切れさせて、故意に終わらせた。
「? どうしたんだ? もう終わりか?」
「違う。もうひとつあるんだが…。同じ時系列で、さっきと変わらない。ちとキツいかもな」
「僕はかまわない。お前が視たものをそのまま見せてくれ」
「わーったよ。ったく」
 もう一度横たわり、目を閉じる。
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