夢の中で (短編)

□気に入られるためには?
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「お前、捨てられたのか?」
 ゴーグルをつけた金髪の少年が、黄色い傘をさしていた。
『ヴ〜』
 不機嫌な表情丸出しで、自分が子犬に変化していることを意識して低くうなった。
「よし!オレが家に連れて帰ってやるってばよ!」
 子犬になったオレを小脇に抱えて少年がたどりついた家は、アパートだった。
「ただいま!」
「お帰りー…え。犬、連れて来ちまったのか?うわっ!!」
 ナルトに床に下ろしてもらってから、体を震わせて全身の水分を飛ばした。
「このバカ犬!せっかく掃除したのに!もー!ナルト!元の場所に戻してこい!」
「イヤだってばよ!」
 雑巾を片手に持ってドアを指す桜花に、ナルトがオレを抱えて反論した。
「どしゃ降りで凍え死んだら、姉ちゃんの責任だってばよ!」
「勝手にオレのせいにするな!!」
 かがんで床を拭く桜花を見てナルトが、いきなり泣き出した。
「姉ちゃんのバカ!!子犬殺しだってばよ〜!!」
 ビービー泣くナルトを見とがめたのか、床を拭き終えた桜花が盛大なため息をついた。
「…分かった。飼っていいから、泣くな」
「ほんと!?やった! 桜花姉ちゃん大好きだってばよ!!」
 飛びついて抱きつくナルトと一緒に、子犬らしく2人の周りを跳ねた。
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