夢の中で (短編)

□昨日会った人は…
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「桜花はオレの嫁!」
「なにを!オレの嫁に決まってんだろ!」
「いいえ!私ですー!」
 男女問わず桜花さんを巡る争奪戦&口論が発展した。
 受付室が即座にバトロワの会場になり、くのいち同士は髪を引っ張り合うなどの過激な行動に、男共は殴り合いクナイを投げつけ合うなどの暴動に発展した。
「あわわ…三代目。どうしましょう!?」
 プカプカとキセルから煙を出す三代目は、オレと同じように机の下に隠れながらおっしゃった。
「桜花1人で、ここまで暴徒と化すとは…恐ろしい娘よのぉ…」
 のほほんとした口調で言うものだから、オレの心配と焦りが増す。
「感心してる場合じゃないですよ!!三代目!!」
 すっかり涙目になったオレは、頭をかかえてうずくまった。


 日が傾き空が黄昏色になった頃、天使の声と聞き間違えるほど優しい声が室内を静かに満たした。
「何やってんの。アンタら」
 訂正。優しい笑顔を浮かべた彼女が、机に書類を置いてから恐ろしいほど冷たい声で告げる声が聞こえた。
「…桜花さん…うっ」
 なぜか分からないが、タックルの要領で桜花さんの脚に抱きついた。
「怖かった〜」
「だ、大丈夫か?イルカ」
「大丈夫でず。えぐっ」
 優しく頭をなでられるが、不意にその動きが止まった。
「で?イルカを泣かせたのは、どいつだ?」
『はたけカカシ』
 と、さっきまでの騒動がウソのように静まり、声をそろえて同じ人物の名を言った。
「テメー。ツラ貸せやコラ」
「え!?オレのせい!?」
 数分後。
 たんこぶだらけになった哀れな銀髪上忍が床に転がっていた。


《昨日会った人は…みんなの憧れの的》
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