夢の中で (短編)

□リンとの約束
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(そっちの黒いTシャツのほうが似合うよ)
(え?)
 似たようなロゴが入ったプリントTシャツを持って悩んでいた時、茶髪の女の子が自分の後ろに立っていた。
(あ、ごめんね。勝手なこと言っちゃって)
(別にいい。それに、服を選ぶのなんて久しぶりすぎて分かんないし、洋服は初めてで…一緒に決めてくれないか?えっと…)
 大蛇丸の研究施設から出てから、初めて自分の言いたいことを声に出すことができた。
(リンっていうの)
(桜木桜花だ。よろしく、リン)
(よろしくね。桜花ちゃん)
 それがきっかけになって、服を買う時はいつも二人一緒に行くようになった。
 暗部に入隊した翌年に第三次忍界大戦が起きてオビトが死に、カカシが暗部に入隊して、九尾事件が起きた。
 九尾を封印されたナルトを抱えて瓦礫の山を飛び越え、リンを探して駆けずり回ったんだ。
(リン!)
 彼女が口を開くと、か細い声が聞こえた。
(桜花ちゃん…)
(…なんだ?)


「―んせい!桜花先生!!」
 裾を引っ張るサクラの声で、我に返った。
「…え?なに?」
「私、桜花先生が決めた服にします!」
「そうか」
 レジに向かう途中で、リンの最期の言葉で最後の約束を思い出していた。


《素直になるって…約束して…桜花ちゃんは、強がりだから…》
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