夢の中で (短編)

□積極すぎる敵
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「体術奥義・千年殺し!!」
 一見すると寅の印を組んでいるようだが、本当はそのまま全身のバネを使ってものすごいカンチョウをしただけだが、テンゾウに対するカカシのマネにすぎない。
 クナイなど何らかの武器で攻撃してくると思った敵は、ぶざまにその攻撃をケツに受け今まさにアホな表情をしているのである。
 まさかコワモテの敵があんな表情するなんて、地味にウケる。(笑)
 みっともない悲鳴をあげたくないものだから、顔をしかめるだけになってるけど…これは見物だね。
「…痛かったか?」
 影分身を消してオレが水面から顔(仮面をかぶったまま)聞くと、敵の唇が吊り上がり瞳が血走っていた。
「オレのビンゴ・ブックに載せられているから、どんなヤツかと思えば…」
 水面から出ようと思ったが、術にかかったらしい。彼が作り出す水玉の中に閉じ込められていた。
 捕まったオレに向けられたものは、彼の左手にあるデカい刀ではなく、笑みだった。
「お前、おもしろいな」
「そりゃドーモ」
「一生ここに閉じ込めるぞ」
「やなこった」
 いつものように呪印の痛みを無視して、瞳の色を黒から桜色に変化させて水牢の術(勝手に命名)からたやすく抜け出した。
 (オレ、何やってるんだ?ビンゴ・ブックに載るくらいの実力なのに、敵と会話するなんて)
 だけど、それは向こうも同じ考えだったようだ。
「オレのものになるのがダメなら、ダチはどうだ?」
「いやいや。ダチになる前に、オレら敵同士だから」
「今からダチになれ」
「命令かよ…はー…」
 これ以上しつこいと困ると思い、『友達以上恋人未満』になることを承諾した直後に、相手に幻術をかけて死んだことにした。


《積極すぎる敵は、友達以上恋人未満》
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