夢の中で (短編)

□ごめんね
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 着いた頃には、サスケが屋敷から出て行くところだった。
「サスケ!!」
 振り向いたサスケは、暗部の格好をしているオレを警戒心丸出しでクナイを投げつけてきたが、それを避けて頭にかかと落としをくらわせた。
「いっ!」
「ったく、オレだってば」
「それなら最初から仮面外せよ!」
「仮面つけてても声で分かれ!声で!」
 叱りつけながら、ほっぺを左右に引っぱりたい気持ちを抑える。
「…今日は、班で任務だろ?暗部の格好してどうした」
「ん?しばらく班を離れるからな」
 ぴたりと少し先を歩くサスケの足が止まった。それから、ゆっくりを振り向かれて睨まれたが、全く怖くなかった。
「いつ班に戻ってくるんだ?」
「さぁ。知らない」
 きっぱり言うと、心なしか肩を落としているようにも見えたし、寂しがっているようにも見えた。
 だが、その漆黒の瞳を見れば、『また独りぼっちになるのではないか』という不安が、はっきりと表れていた。
 だから、ナルトと同じ言葉をかけた。
「大丈夫だ。必ず帰ってくるから」
「ああ」
「あ、そうそう。この前、ミルクゼリーの作り方教えただろ?」
「それが?」
「帰って来たごほうびに作っておいて欲しいんだ。ナルトに頼んだら賞味期限切れの牛乳を使うだろうし、サクラには頼みにくいし…だから、サスケ。頼まれてくれねーか?作っても、そんなに甘くないから甘いのが嫌いなお前でも食えると思うんだ」
 ため息をつかれたが、『作る』と言ってくれた。
「ありがと。サスケ」
「別にいい」
「任務に行く前に、はい。これ」
 小さな薄茶の巾着を、彼の手にのせた。
「なんだ?」
「波の国にいる時に言ったものだ。死の森に入る前に飲んでおけよ」
「…わかった」
「…ごめんね」
 そう言って、サスケの前から姿を消した。
 彼の頬に一滴の涙が伝っていくのを、見て見ぬフリをした。


《ごめんね…ナルト、サスケ》
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