銀魂 短編
□世界の果て
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「お水、取ってきますね」
『あぁ。』
彼との情事が終わり水を取りに彼の部屋を出る。
暫くして戻り部屋の襖を開けると、彼は窓を開けて外を眺めていた。
暗い部屋に浮かび上がる丸くて大きい月が妙に不気味で吸い込まれそうになる。
ふと我に返って月明かりに照らされる彼に視線を移すと今にも何処か遠く、手の届かぬ処へ行ってしまうような気がして声を掛けずにはいられなくなった。
「晋助、何を見ているの?」
『…さァな、暗くて何も見えやしねェ』
彼は振り向きもせずただ暗闇を見つめていた。
彼の閉じられた眼は今まで何を見てきたのか。開かれた眼は今、何を見ているのか。そして、この先その眼で何を見ていくのか。私にはわからない。
そんな事を彼に直接聞く事など出来るはずもなく、私は彼の隣に立ち一緒に窓の外を眺めた。
わからなくてもいい。彼が見る景色を私も見ていたいのだ。あわよくば彼の隣で…
『何か見えたか?』
「…いいえ、暗いばかりだわ。」
『冷えるな。』
そう言うと彼は窓を閉めて私に向き合った。
『朝香、俺はこの腐った世界でお前を見つけた。何も無ェ筈の、この世界で。』
「…晋助……」
彼は私の顎に手を添えて上に向き合わせると…
『俺ァもう、何もいらねェよ』
「私、何処までも付いて行くわ。世界の果てに何が有っても、無くても…一緒に逝かせて欲しい。二人ならこのまま消えてしまったって構わない…」
『…そうか。』
そう言った後、彼は私を抱き締めた。その躰はひんやりとしていて、今の私にはとても心地良かった。
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後書き