銀魂 短編
□私と仕事どっちが大事なのとかいう女には…
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もう夕陽は完全に沈んだというのに未だ机の上の書類と睨めっこしている彼。
灰皿は彼の費やした時間を表すように今にも溢れそうだ。
「ねぇ、トシ。そろそろ終わりにしたら?」
『あぁ』
「もう日も沈んだよ?何時間そうしてると思ってるの?」
『そうだな』
彼の返事は適当で動きを止める様子は全くない。
そうしてまた新しい煙草に火をつけた。
折角恋人が同じ部屋にいるというのに一向に仕事の手を止める気配はなく、しかも私を気にかける言葉の一つもない彼にほんの少しだけ苛立ちを感じた。
なので私は立ち上がって無言のまま彼に近づき、彼の咥える煙草を取り上げてキスをした。
『っ…!?』
急な出来事に彼は驚き固まっていて、握る筆からは墨がぽとりと落ちる。
『…急にどうした』
「ねぇ、トシは仕事と煙草と私、どれが一番大事?あ、あとマヨネーズも。」
『何突拍子もねェこと言ってんだ』
「ん〜何となく」
この質問に特段意味はない。ただ相手をしてくれない彼への腹いせだ。
『全部揃って俺、だな。』
「ん?」
『仕事も煙草もマヨも、勿論お前ェもどれ一つ欠けることは許さねェな。』
「なにそれ、欲張りじゃない?」
『あぁ、そうだぜ?俺ァ欲しい物は何がなんでも手に入れるからな。そう、お前も』
そう言いながら彼は私をゆっくり押し倒して、髪を梳くように撫でた。
『折角愉しみは後にと取っておいてたんだが、何処かの誰かさんが待ちくたびれて我慢出来ねぇみてェだから。』
「そんなことないもん」
『あんな意地悪ィこと聞いておいてか?』
「それはぁ…」
『フッ、そんなところも可愛いと思っちまう俺がいるよ』
そう言うと彼は私に口づけた。舌を絡めて口内を優しく犯していく。
それだけで先程までの怒りは蕩けて消えていった。
そのまま耳、首筋、鎖骨と彼の唇が移動して胸元に辿り着くと着物の合わせが開かれちゅっと吸われる感覚が走り自分の胸に印を付けられたことを理解する。
彼は他人に見える所には決して痕を付けない。そんな彼の優しさが私は好きだ。
「トシ…」
『なんだ?』
「ごめんなさい」
『何がだ?』
「意地悪な質問して」
『別に構わねェよ。ただ…』
「ただ…?」
『俺も意地悪してェ気分だな』
一瞬彼の口元が歪むのが見えた次の瞬間、勢いよく着物の帯が解かれそのまま襦袢も解かれてあっという間に生まれたままの姿にされてしまった。