APH夢

□【英】とある雪の夜
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「…寒いねぇ」

とある雪の降る夜。
隣を歩く名無しがポツリと呟いた。

今は久々のデートの帰り。
二人、肩を並べ、俺の家に向かっている最中だ。
久し振りに休みが取れたんだし、どうせなら泊まっていけよ…と誘い、見事にOKを貰ったところだ。

「そうか?」

そんなミニスカートなんか履いてるからだろ。と皮肉をひとつ付け足し、俺はポケットから片手を出す。

「ん」

その手をぶるぶると震えている名無しの方へ差し出せば、名無しは一瞬こちらを上目でちらっと見て

「デート中あたしの太股ばっか見てたクセによく言うよ」

と皮肉気に言い、俺の手をとる。

「な゛っ…、お、俺はそんなことしてないんだからな」

っていうか、お前それは見て下さいって言ってるようなもんだろ。
俺が紳士じゃなきゃ、今日見たよくわからねぇ映画が上映中だろうと、カフェで安っぽい紅茶を飲んでいる最中だろうと、襲ってる。

俺は紳士だからそんな事しねえけど。
多分。

「……まぁ、別に良いけど、さ」
「…良いのかよ。お前そんな事絶対他の男に言うんじゃねぇぞ」

特にあの髭野郎とか。
あんな奴に別に見ても良いとか言ったら、もうどうなったもんかわかんねぇからな。

「言わないよ。
 …ていうか、アーサー手ぇあったか…」
「…そうか?」

名無しがぎゅっと手を握ってきたので、愛しくて堪らない感情をなんとか抑えて手を握り返してやる。

「うん。あったかい…」

耳と鼻を真っ赤にして、震えながら必死に俺の手を握る名無しは、とても可愛くて、
俺はその姿にどうしようもなく欲情していた。

「名無し…」

もう我慢ならんと、うん?とこちらを見上げた名無しの柔らかい唇を奪う。

「ちょ、っん…う」

名無しの時折吐く熱く白い吐息を感じながら、俺は舌と舌を絡ませる。
雪が降り積もる真冬のロンドンで、絡み合う舌と握り合った手だけが熱い。

最後に、ちゅっ と、わざと音をたてるように触れるだけのキスを落とし、(まだ名残惜しいが)その柔らかい唇から離れる。

「…っはぁ、いつも、いきなりだよね」

とぎれとぎれに名無しが文句を言う。

「そうか?キスだけで止めた俺を褒めて欲しいくらいなんだがな」
「ばーあか、こんなところでキス以上のことやる紳士がどこにいるのよ。そこはちゃんと信頼してたしさ」

くそ、変なトコで信頼しやがって。

「ふふ。信用してるからね、英国紳士様」

挑発的にこちらを見てくすんと笑う名無しを見て、俺は誓った。


「家に帰ったら覚悟してろよ」


そう、ロンドンの夜はまだまだ長いのであった。



変な挑発は逆効果END
 

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