APH夢

□【仏】らしくもなく
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「明日、何着てこっかな」

明日はフランシスの家に遊びに行く。
…といっても、フランシスと二人きりな訳ではないから、いささか安心な訳だけど。

メンバーは、菊さんとアル、アントーニョにギル。それに私、名無し。

何をするって訳じゃないけど、フランシスの作ったケーキを食べながら、アルの持ってきた映画でも見て、わいわいするつもり。

優しい菊さんは、「アーサーさんも誘った方が宜しいのでは」だなんて言ったけど、そんな提案はフランシスとアル、それにアントーニョによって一瞬で却下された。
フランシス曰く「あいつがいると飯が不味くなる」らしい。
…まあ、最もな意見かも。ごめん、アーサー。

「これかな?それとも、これかな。フランシスはどっちが好きかな。」

浮かれ気分で服を選ぶ私の横で、ケータイがなる。

フランシスからだ!

私は携帯をとり、通話ボタンを押す。

「はーい?もしもーし?」
「あ、もしもし、名無しー?」

受話器の向こうから聞こえたのは、いつも以上に低く掠れた声。

「えっ、どうしたのフランシス?声…」
「…えへ、ひっどい声でしょ?も、お兄さんの美声が台無し…」

自分の言葉を遮るように、フランシスは けほけほ、と咳き込む。

「…風邪?」

私が恐る恐るそう聞くと、

「ご名答」

フランシスはそう言ってみせた。

「…って事だからさ、名無し。明日のミニパーティは無しにしてくれない?ごめん」
「えっ…べ、別に大丈夫だけど…」
「そう?ほんとごめんね。楽しみにしてたでしょ」
「え、いや、」
「当ててあげようか。今、明日の準備とかしてた?」

なっ、なんで知ってんだこいつ!
どっかに隠れて見てんじゃないか、と辺りを見回すが、勿論どこにもフランシスの影はない。

「なんで知って…」
「電話にでた時の声が弾んでたから、もしかしたらーって思って、ね。当たってた?」

す、鋭いな…っていうか、鋭すぎるくらい鋭い。

「…うん、まあ」
「やだ、お兄さんったらすごーい。お前昔っから、服選んでる時と美味しいもの食べてる時はすっごい楽しそうな声で話すもんね」
「うそ、まじで?」
「あれ、気付いてなかったの?…すっごい嬉しそうな声で『フランシス、これ美味しい!!』だなんていうから、お兄さんも作り甲斐があるのよ。明日も本当はご馳走してあげたかったんだけどな…」

物寂しそうな、低く小さな声でフランシスが言うから、なんだか、凄く抱き締めてあげたい気持ちになった。
…母性本能だな、これ。

「………」

私まで悲しくなっている事に気付いたのか、フランシスはすぐに明るい声色で言う。

「ま、それはまた今度…出来れば二人きりでね」

ちゅっ。

受話器越しにリップ音を飛ばして、

「じゃ、またね。ほんとにごめんね」

と言い、電話を切った。


それにしても…酷い声だったなぁ、フランシス。
大丈夫かな…。


…よし。お見舞いに行こう。
いつも美味しいもん食べさせてくれてるお礼に、私が美味しいもん持って元気付けに行ってやろう。

いつまでもうじうじされてても鬱陶しいだけだしね!うん、そうしよう。

そうと決まればこうしていられないな。今すぐ着替えて、いるもんバッグに詰め込んで、出かけよう。
フランシスの家に着いたら、夜の10時くらいかな…まあ、大丈夫でしょ。

そうして、私はフランシスの家に出かけた。


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