◆短編
□愛してるが故の行為
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10分くらい前にカナト君から「クッキーが食べたいです。早く作ってください」と言われて、私は渋々作り出した。
でも、のろのろと作っている暇はない。早くカナト君の所に持っていかないと…。
けれど、クッキーが10分で出来るはずもなく、怒ったカナト君がキッチンまで来て私に怒鳴り始めた。
「遅いんですよっ!!どうして僕の言う事がすぐに出来ないんですか!?そうやっていつもいつもいつもいつもっ!!!」
「ッご、ごめんなさい!!もうすぐ出来るからっ…」
「フフッ…謝れば済むとでも思っているんですか?莉香さんの血をくれたら許すかもしれませんけどね…。ね、テディ?」
クスクスと不気味に笑うカナト君に背筋がゾッとした。このままでは、ずっとヒステリックに叫ばれてしまう。それだけは阻止したい。
「私の血で許してくれるの?」
「さっきからそう言ってるじゃないですか。さぁ、早く僕に血を下さい…。お腹空いてるんです…」
仕方なく首元を出すと、カナト君が後ろから抱きしめるようにして体を密着させた。
「ねぇ莉香さん…怒ってる僕が普通に首から吸うわけないでしょう?痛くしてあげます…」
首元に突然ピリッとした痛みが走った。カナト君の手元にはギラギラとしたナイフが、私の血を付着させて光っていた。
「カナト君…痛いよッ…」
私の首から血が垂れると、勿体ないとでも言うようにペロリとカナト君の舌が這う。
「ンッ…、痛いんですか?これくらい我慢して下さい。僕を待たせたお仕置きなんですよ…?」
鎖骨がある部分をナイフが容赦なく切りつけてくる。
痛みと吸血と、涙と愛しさとでぐちゃぐちゃになった私は段々意識が落ちていった。
莉香さんは僕のモノ…。誰にも渡しませんよ…