◆短編

□闇
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「もうやめてよ。どうしてこんな事するの…?」
「俺に束縛されるのは嫌か?」

耳障りな金物の音が、カチャカチャと部屋に響く。

「私を閉じ込めてどうするつもりなの?」
「お前が俺に従順になるまで…だな。まあ、その確率は高いわけではないが。」

俯いて、声を押し殺したように笑う蓮二に狂気を感じた。

「蓮二…?」

伺うように…気を遣うように、蓮二に声をかけると

「お前は俺から離れるのは許さない… 。莉香に近づく男は全て排除しなければいけないと思ったんだ、お前が別れを告げる確率は83%だったからな。」
「そっか…。」

彼のデータは狂ってしまったようだ。私が何を言おうと、もう信じてくれないのであろう。蓮二がどうしてこうなったのかは分からない。

「莉香、こんな俺は嫌か?」

悲しそうに、閉じたままの瞳で私を見つめる。

「…。」

私はただ黙って見つめ返すしか出来なかった。

「そうか…。やはり、俺では駄目だったのか。お前の支えにはなれなかった…。」

可哀想で、哀れな目の前の人を、鎖で繋がれた私の腕の中へ閉じ込める。

「蓮二…。私は、蓮二が好き。だけど、貴方を苦しめてしまうくらいなら、一緒に死んで楽になってしまおうか。」

嬉しそうな顔で私を見つめる蓮二に、私も釣られて笑顔が溢れた。

「それも良いな。莉香、一緒に死んでくれ」

最期の笑顔を脳に刻みつけ、ふたり愛し合って死んでゆこう。

狂った愛は、誰にも気づかれることなく闇の世界へと旅立った───。



2013.04.08
2019.07.23 修正



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