GIFT
□冬の文化祭
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smile againの莉珠さまより、素敵イラストをいただきました〜!!!
大歓喜っっっっっっ!!!
というわけで、そのイラストに小説書いてみました♪
莉珠さま、ありがとうございますっ!!!
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【A side】
「もうっ、なんでこんな格好しなきゃならないのよっ」
「まあまあ、いいじゃない?だってわたし達はただ白いシャツに黒いパンツっていうだけなんだから」
「そりゃそうだけど……」
あたしたち女子の手にはそれぞれ、白いシャツと黒いパンツ。
イライラするには理由がある。
この冬の最中、あの校長がおかしなことを言い出しからよっ。
「でも……どうにかならないのかしら、こんな行事?」
「そうよね、文化祭なら別にあるのに」
そう、寒いからこそ熱くあれ!とかなんとか馬鹿なことを言いながら“冬の文化祭”なんていう行事を思いついてしまった校長……。
となると、なんだかんだでイベント好きな風林館はあっという間にお祭り騒ぎに……。
「男子はまだ?」
「視聴覚室から戻ってきてないわよ。衣装もサイズもばらばらだから、きっとみんなでアレ着てコレ着て、って調整してるんじゃない?」
「はあ……めちゃくちゃね……」
なにを間違えたのか、うちのクラスは『コスプレ喫茶』……しかも男子限定で。
なぜなら女子全員がコスプレに反対したから。
だってメイドとか猫耳とか、絶対に露出の高い格好をさせられるもの!
だから男子限定。
でも男子のコスプレなんて、まとめて借りられなくて……結局あちこちで借りた結果、衣装に統一性が無くなった、ってこと。
せめてサイズくらい考えて借りれば良いのに。
で、今日は文化祭当日。
男子が着替えている間、女子は教室で待機。
男子が全員着替え終わったら、女子が視聴覚室で着替え……。
なんだけど、なかなか男子が戻ってこない。
これまたイライラの原因のひとつなのよね。
そこへ、ドカドカと数名の男子が教室へ戻ってきた。
「女子交代!ウエイターになってこいよー」
「ウエイトレスでしょっ。あんた達は……なによそれ?」
「わかんねーの!?医者だよ、医者!知的だろー?」
「……全然」
クラスメート達の会話を聞き流す。
だっていつもとあまり変わらないんだもの。
この様子じゃ、乱馬もきっと変わらないわね。
あ、期待してるわけじゃないわよ?
乱馬がどんな格好したって、あたしは見慣れてるもの。
医者に警官、執事に消防士に浴衣……。
次々と男子が入ってくる中、なかなか乱馬が戻ってこない。
あと数人……のはずなんだけど。
なんとなくソワソワしながら教室の入り口をこっそりチラリと見る。
待ってるなんて思われたくないから、わざと友達と大きな声で話しながら……。
……と、そのときだった。
「「「「「「っきゃあああああっっっっ!!!」」」」」」
「!?!?」
クラスの女の子達の黄色い声が教室に響いた……。
あたしも思わずみんなと同じ方向を見た。
そこにいたのは……。
「やだちょっと!乱馬くん、かっこいい!!」
「なになに!?ぴったりじゃない!」
「さすが、うちの許婚やっ!乱ちゃん、かっこええでっ!!」
「なっ、なんだよおめえら……」
帽子を手に持ち、白いシャツでスマートに立つ乱馬、だった。
これって、この服って……パイロット、よね!?
「ったく、硬っ苦しいなー。本当にコレしかねえのかよ?」
「他のやつらじゃタッパが足りねえか服が細すぎるかなんだよ。乱馬、サイズちょうど良いんだろ?」
「そりゃ、でかくはないけど」
おさげをピンッとはじくその動作はいつもと同じ。
同じ、なのに……。
「……あかね?」
「……」
「おい、あかねっ」
「……え、え!?」
ししししまった!
思わず見惚れちゃって……乱馬相手になにやってるの、あたしっ!?
「な、なに!?」
「なにボーっとしてんだよ?」
「べべべ別にっ。あんたに関係ないでしょっ!」
「……そーかよ」
ムッとした顔で背を向ける乱馬から、あたしは思わず顔を逸らした。
だってあたし、絶対にいま顔赤い!
なんで!?
乱馬が一気にかっこよく見えるなんて、何のマジック!?
「あかねあかねっ」
「え?」
友達がくすくす笑いながらこっそりとあたしに話しかけた。
「いま、見惚れてたでしょ?」
「なっ、だっ、誰がっ」
「いいからいいからっ。あかねじゃなくても見惚れちゃうもんねー」
「なっ、中身は変わらないじゃないっ」
「だってパイロットだよ?本当なら、すっごく頭の良い人がなる職業だよ!?」
「……」
なんていうか……もしかして乱馬、バカにされてない……?
「はー、あかねには悪いけどいい目の保養だわー。こんなイベント、盛り上がらないと思ってたけど……これじゃあ乱馬くん目当ての女子でいっぱいになりそうね?」
「え!?乱馬目当て!?」
「凶暴な3人娘が怖くて乱馬くんに近付けない女子が、イベントを理由に近付くチャンスなのよ!?きっと大盛況ねっ!ウエイトレス、頑張ろう!」
「……」
……そっか……いつもは怖くて近寄れないものね。
でも、だからって……………………あたしが、許婚なのに………………。
「「「いらっしゃいませー!!」」」
ウエイトレスとして声をかけるも、入ってくる女子の目線はみんな同じ。
まるで3人娘やあたしのことなんて忘れたかのように、ポーっとなって乱馬を見てる。
シャンプー、右京、小太刀っ!
なにやってんのよっ、今!今めちゃくちゃに暴れなくてどうするのよ!?
……なんて他力本願したってムダね……。
シャンプーは里帰り中だし、右京はクラスのみんなに暴れそうになるのを必死に止められてるし。
小太刀……は、なにしてるのかしら……。
張本人は、といえば。
女子の目線なんておかまいなしにずっと端っこに偉そうに座ってる。
……って……サボリじゃないっ!!
喫茶店らしく色々なメニューを、と言いたいとこだけど……急だったからなにも用意できずに、お茶とコーヒー、クッキーだけ。
一律50円という格安さもあってか、女子が絶え間なく訪れていた。
「あーもうっ、本当にみんな乱馬くん目当てなのね!?忙しいったらないわっ」
「ほんまやっ!乱ちゃんはうちの許婚やでっ!みんななに考えとんねんっ!」
あたしの許婚よっ!
……なんてことは当然言えず、あたしはため息をつきながら乱馬を見た……けれど。
「え、乱馬?」
さっきまで座っていた場所に乱馬はいない。
教室を見渡すもあのパイロットシャツは見当たらない……。
「おいっ!乱馬が逃げたぞっ!!」
「はあ!?便所って言ってなかったか?」
「どこにもいないんだって!あいつっ、面倒になって出て行きやがったな!?」
男子も騒ぎ出し、乱馬目当てに来ていた女子もざわざわとし始めた。
「あかねっ!乱馬、どこ行ったかわからないか!?」
「しっ知らないわよ、あいつのことなんてっ!」
「ちくしょーっ、せっかく乱馬に女ウケするコスプレを……って、あ」
「……なんですって?」
しまった!という顔の男子に、あたしは頬がピクリと引きつるのがわかった。
それは右京も同じだったようで……。
「今の話、詳しく聞かせてもらおか?あんたら、ただじゃすまへんでっ!」
「「「わあああっ!」」」
ヘラを持って男子達を追いかける右京は、そのまま教室を出て行く……。
「あかね、乱馬くん探してきてよ」
「なんであたしが!?」
「だって乱馬くん目当ての女子、結構売り上げ貢献してるのよ?乱馬くんが行きそうな場所くらいわかるでしょ?」
「……もうっ。探すけど、見つからなくても文句言わないでよっ」
しょうがないなー、まったく。
乱馬が行く場所なんて決まりきってるじゃない?
中庭かグラウンド横の木の下か……屋上。
外は寒いけど、筋肉バカの乱馬は寒さには強い。
だからきっと……。
「いたっ!乱馬っ!」
「ちっ、見つかったか……」
「見つかったか、じゃないわよっ」
屋上に繋がる扉を開けると、寒空の下で手すりに寄りかかって空を見上げる乱馬がいた。
カチッとした白いシャツ、肩章に黒いネクタイ……。
ドキドキを隠すように、あたしはさりげなく乱馬の横に立った。
「……ずいぶんモテるのね?」
「はあ?ヤキモチか?」
「違いますっ!女の子達、みんな乱馬目当てだったわよ」
「へー。俺ってかっこいいからな」
「……なによ、その棒読み」
いつものように偉そうに胸を張って言うのかと思ったのに。
どうでもよさそうな言い方ね?
「べっつにー。そりゃモテるのは否定しねえけど?どうでもいいからな、んなもん」
「どうでも、って……」
「みんなこの制服に寄ってきてるだけだろ。中身だ誰かなんて関係ねえよ」
「……」
そうかな?
みんな、乱馬だから寄ってきてると思うけど……。
「大体、好きでもない女に寄って来られてもなあ……あの3人だけでも毎日疲れてるってのによ」
「疲れてるんだ?」
「見ててわからねえのか!?なんで毎日毎日追いかけられなきゃなんねーんだ……」
「あんたがはっきりしないからでしょ!?」
「はっきりしてるだろっ!」
「……え?」
「へ?あっ、いやっその……」
突然の乱馬の大声、そして耳まで赤く染まった顔……。
「……はっきり、してるの……?」
「……」
「ねえっ」
「……」
「ちょっと乱馬っ!」
「うっせーなっ!してるよっ!」
「!!」
ええええええ!?
なんで!?いつの間に!?
…………じゃあ、どうしてあたしはそれを知らないの…………?
「……乱馬」
「なっ、なんだよ?」
乱馬の顔、見ることが出来ない……。
だって、だってそういうことでしょう!?
はっきりしてるのにあたしは知らない、それはつまり……。
「……うち、出て行くの……?」
「は?なんで?」
「だって……許婚、解消……でしょう?」
「はあっ!?なななななんでそうなるんだよ!?」
肩をグイッと掴まれて、無理やり乱馬のほうへ向かされた。
怒ったような困ったような、そんな顔で眉を顰めてあたしを見る乱馬。
あたしは……。
「え、おい?なんで泣いて……」
「だってそういうことでしょう!?乱馬の答えがはっきりしてるのに、あたしが知らないなんて!そんなの……っ、あたしじゃ、ないから……でしょう?」
「!!!」
目を大きく広げてあたしを見る乱馬が、どんどんと滲んでいく……。
やっぱり……乱馬を見ていられない……。
「……早く言えばよかったのに……あたし、止めたりしないわよ……?」
「止めるって……」
「お父さん達にはあたしから言っておくから……」
「ちょっ、お前、なに1人で突っ走ってんだ!?」
「突っ走ってるのは乱馬でしょう!?」
「おめーだ、ばかっ!!」
「っ!!」
ばかってなによっ!?
……と、顔を上げて口に出そうとした、そのとき。
「っ!?」
おさげが頬に触れる、そして……唇に、ふわりとしたぬくもり……。
「俺……俺は、はっきりしてる……」
「え……」
真っ赤に染まった顔を隠すかのように、乱馬がそっぽを向いた。
「乱、馬……」
「……あの3人じゃねえ……ましてや、他の女でも……」
「え、じゃ、じゃあ……」
「……」
……あたし……期待、してもいいの……?
だって、今のって……キス、よね!?
乱馬の意思よね!?猫になってもいないわよね!?
「……っさ、さーて、戻るか!」
「え」
「そろそろ人も引けてきてるだろ!?戻ろうぜっ」
「う、うん……」
乱馬のあとについて屋上をあとにする。
……手が繋がれていることに、あたたかい気持ちになりながら……。
…完…