GIFT

□morning♪
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【SAYURI side】


 それはいつも通りの日常……だったはず……。


「おはよー!」
「おはよ、あかね!」

「おっはよー」
「おう、乱馬!今日は遅刻じゃねえのか?」
「あー……凶暴な女に起こされ……」

ゴスッ!!

「誰が凶暴だっ!あんたがなかなか起きないから悪いんでしょっ!?」
「痛ってーな!もちっと優しく起こせねーのか、お前はっ!?」
「優しく起こしたって起きないじゃない!」

……乱馬くんって、あかねに起こしてもらってるんだ……。
いつもと同じような2人のやり取りを、慣れた目で(冷めた目で?)見ているクラスメート達。
……あ、男子は羨ましそうね。

そうよねー、どんな風に起こされたとしたってあかねに起こしてもらうんだもん。
そりゃ羨ましいわ。

「もう起こしてあげないわよ!?」
「おー!別に構わねえよっ!」
「明日からひとりで起きなさいよ!?絶対絶対起こしてあげな……っきゃあっ!!」

危ないっ!!
あかねが持った机のバランスが崩れて体勢を崩した、その時!!

「危ね……っ!!」

ひとつ目の机を投げつけられて教室の端にいた乱馬くんが、一気にあかねのそばへ。
軽々と机の足先を片手で持ち、片手はあかねの腰を引き寄せる。
驚いたのか、あかねの手はぎゅっと乱馬くんの首に回された。

「……あ、ありがと」
「ったく!ほんっとにお前はそそっかしいな!」
「あ、あんたが悪いんじゃない!」

って……そんな格好でよく喧嘩できるわね?
恋人同士ならマジでキスする1秒前って感じよ?
机が邪魔だけど。

「……キスしそう」
「「!?!?ちっ違う違う違う違うっ!!」」

誰かが放った一言に焦って離れる2人。
思いっきりハモってるの、気がついてないのかしら?

ワタワタと自分の席に着く2人を見て、みんなも席に着いた。
先生が入ってきてHR、そして授業……って!
乱馬くん、もう寝てる!?
いくら政経が苦手って言っても、いくらなんでも早すぎない!?

って、あかね?
ため息つきながら乱馬くんを見てるけど……。
どっちかっていうと、その目は“見つめてる”に近いわよ?

……あ、先生が乱馬くんに気付いた……。

「早乙女ぇぇぇっっっ!!起きろっ!!!」
「いてっ」

投げ付けた黒板消しを肩に受けて、小さく呻く乱馬くん。

「……うっせーな……」
「くぉらっ!誰に口をきいてる!?」
「んあーーー……?」

ちょ、ちょっと?
乱馬くん、寝ぼけてるの!?
目を瞑りながらしゃべってる!
ある意味、器用よね……。

「起きろーーーっっ!!!」
「んー……あと5分……」
「もう寝る時間じゃないっ!!」
「……もちっと優しく起こせねえのか、あかね……」
「……」

……あーなるほどね。
朝、あかねに起こされてるのと混同してるわけね?

まーあかねったら真っ赤になって……。

「……て、天道……」
「は、はい……」

あんぐりと口を開けた先生に名指しされて、あかねが真っ赤な顔のままで返事をした。

「いつも早乙女を起こしてるのか……?」
「え、あの……は、はい……大体……」
「……そうか……もう一緒に寝て……」
「ませんっ!!へっ、部屋に起こしに行ってるだけですっっ!!!」
「……ずいぶんと必死に言い訳するんだな?」
「だ、だって……あの、ほんとに違うんですっ!」
「ほー?」

……ちょっと先生?
羨ましそうに見えるのは気のせいかしら……?
……そうよね、確か先生ってば独身……最近化学の先生にフラれたって噂だし。

「じゃ、天道。こいつを起こせ、今すぐにっ」
「はっ、はいっ」

あかねが慌てたように隣の乱馬くんの肩を揺すった。

「乱馬っ、ちょっと乱馬っ!」
「ん……」
「なんでこんなに早く寝られるのよ、あんたはっ!?」
「いーーーじゃねえか、昨日は遅くまで……」
「ばっ、ばかっ!!早く起きなさいってば!」
「おめーがなかなか寝かせてくれな……」



ゴスッッッ!!!!!!!!!!



うわおっ!
あかねの肘がきれいに乱馬くんの脳天直撃!!!!

ってか……さすがにそれは命の危険に繋がると思うわよ、あかね?

「先生、乱馬は寝てるんじゃなくて気を失っているようです」
「…………わかった」

青くなった先生が後ずさる……。
そりゃそうよね、こんなにニッコリと笑顔のあかねにさからって、あんな一撃くらいたくないもの。

……怖すぎるわよ、あかね……。

「じゅ、授業を再開しようか……」
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

静まった教室。
何事もなかったかのように授業が再開された。









……ん?
ちょっと待って?








『おめーがなかなか寝かせてくれな……』


…………あかね、あとできっちり説明してもらうわよ…………!?!?!?!?





…完…

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