GIFT

□悠牙くんの春
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あかねに似た白い肌に、明るい黄色の水着を身に付けた蒼依。
新しい水着を大好きなお父さんに見て欲しくて、本日は家族で海水浴なり……。


あ「蒼依ー!あんまり遠くに行っちゃだめよー!」
蒼「だーいじょうぶよー!だってお父さんが付いてるんだからっ!」
乱「……ったく、しょうがねえなあ……」

しょうがねえ、と言いながらも蒼依には甘い乱馬。
蒼依の後ろにぴたりとついて、蒼依に遠慮なく突き刺さる男共の視線を弾いていく。
これはいつも、蒼馬の仕事なのに……とボヤく。
格闘遠征でこの場にいられなかった蒼馬は、さぞかし妹の蒼依を心配していることだろう。

だがしかし、乱馬の心配は……。

乱「おい、あんまり遠くには行かねえぞ。ちゃんとお母さんが見えるくらいの場所に……」
蒼「ちょっとお父さん、お母さんがナンパされないか心配なだけでしょ!?」
乱「……」

バレたか、とでも言いたげな表情でそっぽを向……いや、あかねの方をちらりと見る乱馬。
案の定、あかねにも無遠慮な視線が突き刺さっているようだ。

蒼「もうっ、お父さんってば!お母さんよりあたしでしょ!?見てよ、新しい水着!」
乱「んー?おお、あかねが着ても良さそ……」
蒼「あたしのっ!!」

乱馬だってそんなことを言えば蒼依がふてくされるのはわかっている。
単に蒼依をからかって遊んでいるのだ。

と、そのときだった。



ちゅどーーーん!!!!!



聞き覚えのあるその音に、思わず2人その方向……あかねがいる方へと視線を走らせた。

蒼&乱「……」

やっぱり、という表情で2人が目にしたのは……。

悠「ここはどこだっ!はっ!!!あかねさんっ!!!」
あ「ゆ、悠牙くん……」

父・良牙が“あかねさん”と呼ぶため、すっかり息子の悠牙もその呼び方で固定されてしまっているようだが……。
あかねも乱馬もそれには違和感がないらしい。

悠「あかねさんがいるということは、ここは天道道場!」
あ「違うわよ、どう見たってここは海でしょう?」
悠「……」

きょろきょろ、とあたりを見渡す悠牙。
その視線の先には……。

悠「あああああっ!!蒼依ちゃんじゃないかあああっっっ!!!!」
乱「ちっ!」

見るからに蒼依に想いを寄せている悠牙は、乱馬にとっては邪魔でしかない。
良牙の息子らしく、方向音痴で思い込みが激しい。
今はまだ蒼依一筋のようだが、いつあかりちゃんのように第二の女が現れるとも限らない。

乱「よしっ!悠牙っ!あかねと一緒にいてくれよっ!」
悠「は!ら、乱馬おじさん!?!?!?」
乱「よーーーしっ!さて蒼依、どこに行きたいんだって!?」

まだまだ蒼馬ほどではないが、格闘家としてしっかりとした地位を築いている悠牙。
しかも本人は蒼依にぞっこん。
悠牙がそばにいればあかねに声をかけようなんて男はいないだろう。
あかねをナンパ男から守り、蒼依を悠牙に近づけさせない、これは良い手だ!

……と、乱馬が思ったかどうかはともかく。

悠「そっそんなあ……」
あ「あの、悠牙くん、あたしなら大丈夫だから、ね?蒼依と一緒に遊んでらっしゃいよ」
悠「いえっ!とんでもないっ!ここにいますっ!」
あ「……」

乱馬に逆らったらどうなるか、わからないほどバカではない。
格闘家としての大先輩、しかも蒼依の父。
言う事を聞いておくほうがいいというもの……。

そしてあの2人は……。

蒼「わーーーーいっ!!じゃあね、あっち!あの三角の岩場の向こう!人が空いていて泳ぎやすそう!」
乱「なんだ?あんなとこまで行くのか?」
蒼「いいじゃない、お母さんは安心なんだし!」

あっちあっち、と蒼依に腕を引かれる乱馬。
おいおい、と言いながらもついていく。

それを見るのが……。

悠「……蒼依ちゃあああん……」
あ「……もう、みんな……しょうがないなあ……」

指を咥えて乱馬と蒼依の後姿を見るのは悠牙。
そんな悠牙と先の2人を見て、ため息をつくのがあかね。

……悠牙の春は遠そうである……。





…完…

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