中編

□VDの一日(完結)
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 悩みに悩む友人あかね。
 今年はどうするのかなー?





「あかねでも?」
「うん……何かないかな?」

バレンタインを明日に控えた日。
入学以来の親友、あかねに簡単に作れるチョコ菓子を聞かれた。
あかねはいつも一生懸命だけど……調理実習を見ている限り、単純作業でも余計な隠し味なんかを入れて台無しにしてしまう。
今年は何日も前から色々と試作していたみたいだけど……この様子じゃダメだったみたいね。

クッキー……は、前に失敗して乱馬くんを寝込ませたみたいだし。
(ある意味、格闘よりも威力があるわね。)
ケーキ……きっと何かを爆発させるわね。
なにより、手のこんだ物は三人娘が作りそうだわ。

「きっとまた追いかけられるんだろうな……ほんと、はっきりしないんだからっ」
「まあまあ、乱馬くんだって最近はだいぶ意思表示してるように見えるよ?」
「どこが!?」
「……」

あかねはわかってないのかしら?
かなり前から乱馬くんのあかねを見る目が変わっていることに。
乱馬くんの三人娘に対する態度が変わっていることに。

「あんな優柔不断の変態、なんでモテるのか全然わからないわっ」
「じゃあなんであかねはチョコを手作りしようとしてるのよ?」
「あっ、あたしは……一応ほら、許嫁だし?」
「親に決められただけでしょ?だったら別に市販の義理チョコでもいいんじゃない?」
「だっ、だって、その……」

真っ赤になって手を頬に当てる姿は、女の私から見ても本当にかわいいと思う。
乱馬くんが惚れるのも無理ないわね、うん。

とはいえ、2年になった今、乱馬くんにチョコを渡そうとしてるのは三人娘だけじゃない。
体育祭での活躍で下級生のファンが山ほどいる。
あれだけ抜きん出た身体能力、放っとかれるわけないわよね。
許嫁の存在も三人娘の存在も知ってるのに、乱馬くんにアタックする気持ちはわからないけど。

「乱馬くんの場合、なに作っても誰かとカブりそうよね……」
「……っどうせヘラヘラしながら他の子のチョコは食べるのよね、あたしが作ったのは食べないくせにっ」

いやいや、食べると思うわよ?
しかも相当喜んで。
乱馬くんのことだから嫌がる素振りだけはしそうだけど。

「乱馬くんの帰り、遅そうね」
「……明日中に帰ってこなかったら許嫁やめてやるんだからっ!」
「帰ってくるでしょ、あかねのチョコが欲しくて」
「……そっ、そんなこと……」
「あ、そうだ。作ってすぐ食べるものにしたら?同棲してる女の特権!」
「あの……あたしでも、できるかな?」
「そうねえ……」

あら『同棲』って言葉は否定しないんだ。

ま、それはともかく……。
チョコフォンデュ……は準備が大変ね。
食べたら中からトロリとチョコが出てくるケーキ……は、あかねには難しいわ、きっと。

あっ!そうだっ!

「どうせ乱馬くんの帰りが遅くなるなら……こんなのはどう?」

あたしのセリフにあかねが笑顔になった。
これなら大丈夫、よね。
念のために料理クラブに混ざって調理室で練習して。





翌々日。
私は朝からワクワク……。
さて、乱馬くんはどんな顔して学校に現れるかしら?
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